サプライチェーンマップとは?作り方と活用の手順を4ステップで解説

サプライチェーンマップとは?作り方と活用の手順を4ステップで解説

サプライチェーンマップは、自社の製品が原材料から顧客の手元に届くまでに関わる取引先とモノの流れを、1枚の図と台帳にまとめたものです。作り方は、対象製品と範囲を決める、取引先を洗い出す、取引関係を図にする、リスク評価を加える、の4ステップで進められます。

この記事では、調達・SCM担当の方や、可視化を支援するコンサルタントの方に向けて、各ステップで何を入力して何を出力するのかを、架空の製品を例にして示します。供給途絶への備えや、取引先における人権への配慮といった場面で、マップがどう使われるのかもあわせて整理します。

サプライチェーンマップとは何か

サプライチェーンマップとは、特定の製品について、原材料の調達から製造、物流、販売、消費までの流れと、そこに関わる企業を図で見える化したものです。一覧表だけでは見えにくい「どの会社の先にどの会社がいるか」という関係を、1枚で確認できるようにすることが目的です。

サプライチェーンとは調達から消費までの一連の流れ

サプライチェーンとは、原料を手に入れるところから、作り、運び、売り、使われるところまでを、企業どうしの取引でつないだ全体の流れを指す言葉です。日本語では「供給連鎖」と訳されることもあります。

身近な例では、水筒のような日用品でも、樹脂やゴムなどの原料を作る会社、部品を成形する会社、組み立てる会社、物流会社、小売店といった複数の企業がつながって、はじめて店頭に並びます。1社の中で完結する工程はほとんどなく、企業どうしの受発注の連なりがサプライチェーンの実体です。

マップで見える化する対象

マップで見える化する対象は、取引先の名称、取引している部品や原材料、拠点の所在地、そして取引先どうしのつながりの4点が基本です。必要に応じて、物流の経路や、情報が流れる向きも書き加えます。

ここで大切なのは、直接取引のある1次取引先だけで止めないことです。政府が公表している人権尊重のガイドラインでは、対象となる「サプライヤー等」について、サプライチェーン上の企業やその他のビジネス上の関係先をいい、直接の取引先に限られないと定義されています(ビジネスと人権に関する行動計画の実施に係る関係府省庁施策推進・連絡会議「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」令和4年9月、1.3節)。1次取引先の先にいる2次・3次の取引先まで視野に入れる考え方が、マップづくりの出発点になります。

調達、製造、物流、販売、消費の5段階が左から右へ並び、各段階に複数の企業が枝分かれしてつながるサプライチェーンの構造図

サプライチェーンマップが必要になる場面

サプライチェーンマップが必要になるのは、取引先の先にある事情を把握していないと判断できない場面です。代表的なのは、供給が止まるリスクを見積もるときと、取引先の人権・環境面の対応を確認するときの2つです。

供給途絶リスクの把握

供給途絶リスクを把握するには、どの部品がどの会社のどの拠点に依存しているかを、取引先の先まで含めて知っておく必要があります。1次取引先が複数あっても、その先の原料メーカーが同じ1社に集中していれば、1か所のトラブルで全ての供給が止まる可能性があります。

災害や事故が起きたあとに初めて取引先に問い合わせると、回答を待つ間にも在庫が減っていきます。平時にマップを作っておけば、影響を受ける製品や拠点を短時間で絞り込めます。調達先を分散するかどうか、安全在庫をどの部品に積むかといった判断の根拠にもなります。

取引先の把握と人権・環境対応

取引先の人権・環境対応を確認するときは、まず自社のサプライヤー等を把握していることが前提になります。政府のガイドラインでも、人権への負の影響を特定・評価する前提として、自社製品・サービスの追跡可能性を確保するために、自社のサプライヤー等について把握しておく必要があると示されています(同ガイドライン4.1.1項)。

取引先から人権や環境に関する質問票や調査への回答を求められる企業も増えています。そうした依頼に対応する側にとっても、自社の取引先が誰かを整理した資料があると、回答の作業が短くなります。なお、このガイドラインは法的拘束力を有するものではないと明記されています。具体的な対応の範囲は、自社の業種や状況に応じて、必要に応じて専門家に相談しながら決めてください。

作り方 STEP1〜STEP4

サプライチェーンマップは、対象の決定、取引先の洗い出し、図の作成、リスク評価の4ステップで作れます。各ステップで「何を見て、何ができあがるか」を決めておくと、途中で作業が広がりすぎるのを防げます。

この章では、架空の題材として「樹脂製の水筒を作るA社」を使います。A社は水筒を自社で組み立て、本体の成形、フタの部品、梱包材を外部に依頼しているという想定です。

STEP1 対象製品と範囲を決める

STEP1では、マップにする製品を1つに絞り、どの深さの取引先までを対象にするかを決めます。最初から全製品・全取引先を対象にすると、作業が終わらないためです。

  1. 入力:売上や供給停止時の影響が大きい製品の候補、既存の購買データ、部品表(BOM)。
  2. 候補の中から、止まったときの影響が大きい製品を1つ選びます。A社の例では、主力の水筒1機種です。
  3. 取引先を何次まで追うかを決めます。最初は2次取引先まで、と区切るのが現実的です。
  4. 図にするのが目的であって、全情報を集めることが目的ではないと、関係者で確認します。
  5. 出力:「対象製品:水筒1機種/対象範囲:2次取引先まで/期限:4週間」のような一行の範囲定義です。

範囲を絞る考え方は、政府ガイドラインが示す「優先順位を踏まえ順次対応していく姿勢」とも整合します。同ガイドラインは、多くの企業にとって全ての取組を直ちに行うことは困難であり、まず自社および直接契約関係にある取引先から優先的に対応し、その後に間接的な取引先へと広げていくことも考えられるとしています(同ガイドライン2.2.4項)。

STEP2 取引先を洗い出す

STEP2では、対象製品に関わる取引先を、購買データと部品表から台帳にまとめます。まず1次取引先を漏れなく書き出し、次に各社へ「その部品の材料や部品はどこから仕入れているか」を確認して、2次取引先を追加します。

  1. 入力:STEP1の範囲定義、購買・発注の履歴、部品表、取引先との契約書や基本契約の一覧。
  2. 部品表の1行ずつに、供給している会社を対応させます。1つの部品を複数社から買っている場合は、全社を書きます。
  3. 1次取引先に、仕入先・製造拠点の所在地・代替が効くかどうかを問い合わせます。回答が得られない項目は、空欄ではなく「未回答」と記録します。
  4. 商社や物流会社など、モノを作らないが流れに関わる会社も行を追加します。
  5. 出力:取引先台帳(1社1行)です。

台帳に持たせる項目の例は次のとおりです。

項目

書く内容

A社の記入例(架空)

取引先名

正式な社名

B成形株式会社

取引の階層

1次か2次か

1次

供給している物

部品名・原材料名

水筒本体(樹脂成形品)

仕入先

その先の取引先

E樹脂工業(樹脂原料)

拠点の所在地

国・地域

国内の工業団地

代替の可否

他社で代われるか

金型が必要で、切り替えに時間がかかる

情報の確度

確認済みか推定か

確認済み

最後の「情報の確度」の列を設けておくと、後から見た人が、どこまでが確認された事実で、どこからが推定かを区別できます。

STEP3 取引関係を図にする

STEP3では、取引先台帳をもとに、モノが流れる向きに沿って、会社を線でつないだ図を作ります。図は、左に上流(原料)、右に下流(顧客)を置くと読みやすくなります。

  1. 入力:STEP2の取引先台帳。
  2. 自社を中央に置き、左側に1次取引先、さらに左に2次取引先を並べます。
  3. 会社を四角で、モノの流れを矢印で表します。部品や材料の名前は、矢印の上に書きます。
  4. 同じ会社が複数の部品に登場する場合は、四角を分けず1つにまとめて、線を複数引きます。集中している箇所が見えるようになります。
  5. 情報が確認できていない取引関係は、点線で描きます。
  6. 出力:1ページに収まる関係図です。

A社の例では、本体の成形はB成形、フタ部品はC部品、梱包はD梱包がそれぞれ担当します。B成形とC部品の先をたどると、どちらも同じE樹脂工業から樹脂原料を仕入れていることが分かります。台帳だけでは気づきにくい、この「共通の仕入先」が、図にすると一目で見えます。

使う道具は、表計算ソフトの図形機能でも、スライド作成ソフトでも、手書きをスキャンしたものでも構いません。取引先が増えて手作業が負担になってから、専用のツールを検討しても遅くありません。

自社を中央に、左側に1次取引先と2次取引先、右側に物流と顧客を配置し、矢印でモノの流れを示した関係図

STEP4 リスク評価を加える

STEP4では、完成した関係図の会社ごとに、供給が止まったときの影響の大きさと、止まりやすさを評価して書き加えます。評価の目的は、全社に同じ手間をかけるのではなく、優先して対応する箇所を絞ることです。

  1. 入力:STEP3の関係図、取引先台帳、過去の納期遅れや品質問題の記録。
  2. 会社ごとに「影響の大きさ」を、高・中・低の3段階で付けます。代替が難しい部品や、止まると製品が作れなくなる部品は高になります。
  3. 会社ごとに「止まりやすさ」を、高・中・低の3段階で付けます。拠点が1か所に集中している、過去に遅れがあった、といった事実を根拠にします。
  4. 2つの評価が両方とも高い会社を、優先対応の対象にします。
  5. 人権・環境面で確認が必要な取引先があれば、別の列で印を付けます。
  6. 出力:評価が付いた関係図と、優先対応の取引先リストです。

A社の評価を表にすると、次のようになります(いずれも架空の例です)。

取引先

供給物

影響の大きさ

止まりやすさ

判断

E樹脂工業(2次)

樹脂原料

高

中

B成形・C部品の両方が依存。代替の原料先を探す

B成形(1次)

本体成形品

高

低

金型の保管場所を確認する

C部品(1次)

フタ部品

中

低

現状維持

D梱包(1次)

梱包材

低

低

他社で代替可能。対応は後回し

影響の大きさと止まりやすさの2軸で取引先を並べ、右上の領域を優先対応とするリスク評価のマス目図

評価の数値化(点数付け)は、基準が曖昧だと担当者ごとにばらつきます。高・中・低の判断基準を一行ずつ言葉で決めておくと、後から見直すときも迷いません。

作成時に起きやすい失敗と対処

作成時に起きやすい失敗は、範囲を広げすぎて完成しないこと、1次取引先で止まってしまうこと、作ったあとに誰も更新しないことの3つです。それぞれ、先に対処を決めておくことで避けられます。

よくある失敗

起きる理由

対処

範囲を広げすぎて完成しない

全製品・全取引先を一度に対象にしたため

STEP1で製品を1つ、深さを2次までに絞る

1次取引先で止まる

2次以降の情報を聞く手間や関係性の遠さ

主要な1次取引先から順に、仕入先の名前だけでも教えてもらう

取引先から回答が得られない

取引先にとっては営業上の情報にあたる場合がある

何のために使うのかを説明し、回答できる範囲だけで構わないと伝える

図が見づらくなる

情報を1枚に詰め込みすぎた

全体図と、重要箇所の拡大図に分ける

作ったあとに更新されない

担当者と更新の時期が決まっていない

更新担当と見直しの周期を、完成時に決める

特に、取引先に情報を聞く場面では、相手の負担を意識することが大切です。誰が何の目的で使うのかを先に伝えると、回答を得られる可能性が高まります。回答が得られなかった項目は、推定で埋めずに「未回答」と記録し、後から確認できる状態にしておきます。

マップを作ったあとの課題の整理には、サプライチェーンマネジメントの課題と解決の考え方の記事が参考になります。

マップの更新と活用の仕方

サプライチェーンマップは、作って終わりにせず、決まった周期で見直し、判断の場で使い続けることで役に立ちます。取引先は入れ替わるため、そのままにすると数か月で実態とずれていきます。

  1. 見直しの周期を決めます。たとえば半年に1回や、主要な取引先が変わったときなど、きっかけを書き出しておきます。
  2. 更新の担当者を1人決め、取引先台帳を唯一の元データとします。図は台帳から作り直します。
  3. 調達先の見直し、在庫の持ち方、新規取引先の選定といった会議の場に、マップを持ち込みます。
  4. 対象製品を1つ増やすたびに、同じ4ステップを繰り返して範囲を広げます。

活用の具体例として、事例の読み込みと組み合わせる方法があります。他社がどのように供給の問題に向き合ったかは、サプライチェーンマネジメント(SCM)の成功事例に学ぶポイントや、サプライチェーンマネジメントの事例解説で整理しています。自社のマップと見比べると、どこから手を付けるかの判断材料になります。

コンサルタントとして、こうした可視化を顧客企業の支援として担う場合もあります。案件の入り口については、大手企業は与信や購買規定、機密保持などの都合から、フリーランス個人と直接契約しないケースが多く、法人を挟んだ3者間の契約が実務上の基本とされています。そのため、エージェント経由で案件を探すのが現実的な進め方です(案件の探し方はサプライチェーン・SCMコンサルのフリーランス案件の探し方と必要な経験で整理しています)。

まとめ|小さな範囲から始めて広げる

サプライチェーンマップは、1つの製品、2次取引先までという小さな範囲から始めて、少しずつ広げるのが確実な進め方です。

  • マップは、特定の製品について、調達から消費までの企業と流れを1枚にまとめたものです。
  • 作り方は、対象の決定、取引先の洗い出し、図の作成、リスク評価の4ステップです。
  • 1次取引先で止めず、その先の取引先まで視野に入れると、共通の仕入先への集中が見えます。
  • 完成後は更新の担当者と周期を決め、会議の判断に使い続けます。

まずは影響の大きい製品を1つ選び、取引先の名前を書き出すところから始めてください。制度や対応の範囲は変わることがあるため、個別の判断が必要な場合は、専門家に相談しながら進めることをおすすめします。

出典・参考情報

  1. ビジネスと人権に関する行動計画の実施に係る関係府省庁施策推進・連絡会議「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」(令和4年9月)(2026-10-14参照)

本記事は2026年10月時点の一般的な情報を基に、サプライチェーンマップの作り方を整理したものです。記事中の取引先や数値の例は説明用の架空のものです。個別の企業や案件への適用にあたっては、状況に応じて専門家にご相談ください。最終更新日:2026年10月14日。

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