プロセスマイニングとは?業務改善で使う3ステップと選び方

プロセスマイニングとは?業務改善で使う3ステップと選び方

プロセスマイニングとは、システムに残った操作の記録(イベントログ)から、実際に行われた業務の流れを再現して分析する手法です。ログが整っていない現場でも、必要な項目を3つに絞って集め、足りない部分をヒアリングで補えば始められます。

本記事では、定義と必要なデータ、できること、メリットと限界、3ステップの進め方、ツールを選ぶ5つの比較軸、コンサルが提案時に確認する点を整理します。2026年10月時点の情報です。BPRや業務改善の案件で提案や導入支援を求められる独立コンサルタントやPMOが、読み終えたときに進め方と確認点を自分の言葉で説明できる状態を目指します。

プロセスマイニングとは?ログから業務の流れを可視化する手法

プロセスマイニングは、業務システムに蓄積された操作履歴を解析し、実際の業務の流れをありのままに可視化する手法です。(IT用語辞典 e-Words、2026年10月参照)担当者の記憶や業務マニュアルではなく、機械的に残った実績データを根拠に議論できる点が特徴です。

たとえば購買の承認業務では、マニュアル上は「申請、承認、発注」の一本道でも、実績を見ると差し戻しや承認の飛ばしが一定数ある、といったことが珍しくありません。こうした設計と実態のずれを、件数と所要時間で示すのがプロセスマイニングの役割です。

イベントログに必要な3つのデータ項目

イベントログに最低限必要なのは、ケースID・アクティビティ・タイムスタンプの3項目です。ケースIDは一連の作業を1つの処理単位にまとめる一意の番号、アクティビティは何をしたかを表す作業名、タイムスタンプはそれがいつ起きたかを表す日時です(SCSK「プロセスマイニングとは」、2026年10月参照)。

項目

役割

購買承認業務での例

ケースID

同じ案件の記録をひとまとめにする

発注番号 PO-1001

アクティビティ

どの作業が行われたかを示す

購買申請、上長承認、発注登録

タイムスタンプ

作業の順序と所要時間を計算する

2026-09-01 09:10

次の表は、架空の購買承認業務から取り出した2件分のイベントログの例です。ケース単位に並べ替えると、PO-1001は3つの作業を約1日で終えている一方、PO-1002は差し戻しで申請が2回発生し、完了まで約3日かかっていると読み取れます。

ケースID

アクティビティ

タイムスタンプ

担当部署(追加項目)

PO-1001

購買申請

2026-09-01 09:10

営業部

PO-1001

上長承認

2026-09-01 15:40

営業部

PO-1001

発注登録

2026-09-02 10:05

購買部

PO-1002

購買申請

2026-09-01 09:30

製造部

PO-1002

上長承認

2026-09-03 11:00

製造部

PO-1002

差し戻し

2026-09-03 11:20

購買部

PO-1002

購買申請

2026-09-03 14:00

製造部

PO-1002

上長承認

2026-09-04 10:00

製造部

PO-1002

発注登録

2026-09-04 16:30

購買部

担当部署のように3項目以外の列があると、部署別の傾向も見られます。ただし最初から列を増やすと整形の手間が膨らむため、まずは3項目だけで流れを描くのが現実的です。

BPRや業務改善で使われる理由

BPRや業務改善で使われるのは、改善前の現状把握をヒアリングだけに頼ると、抜けや思い込みが入りやすいためです。担当者にとって日常的な例外処理は、あらためて説明する対象として意識されにくく、フロー図から漏れがちです。

ログがあれば、「実際にはこの経路を通る案件が全体の何割か」という事実から議論を始められます。BPR全体の進め方はBPRコンサルティングの解説記事、BPRとBPOの位置づけはBPRとBPOの違いの記事、業務フローを描く目的は業務フローを作る目的の記事で整理しています。プロセスマイニングは、これらの現状把握の工程を実績データで裏づける道具と位置づけられます。

プロセスマイニングでできること4つ

プロセスマイニングでできることは、実態フローの把握、所要時間の測定、ボトルネックの特定、例外処理の検出の4つです。それぞれ、イベントログの3項目だけで計算できます。

  1. 実態フローの把握:実際に通った経路を、通過した件数つきで描きます。
  2. 所要時間の測定:作業と作業の間の待ち時間、全体の完了までの日数を測ります。
  3. ボトルネックの特定:待ち時間が長く、件数も多い区間を探します。
  4. 例外処理の検出:差し戻し、手戻り、承認の飛ばしなど、想定外の経路を拾います。
購買承認業務の標準経路と差し戻し経路、承認を飛ばす経路を件数つきで並べた比較フロー図

業務フローの実態把握

実態把握では、設計上のフローと実際の経路を並べ、どの経路に何件流れているかを数えます。同じ顔ぶれの経路を1つにまとめたものを、プロセスマイニングでは「バリアント」と呼びます。

次の表は、架空の購買承認業務100件を経路別に集計した例です。設計上の経路Aは7割強にとどまり、差し戻しを挟む経路Bや承認を飛ばす経路Cが3割近くあるという見立てになります。

経路

通った作業の順序

件数

読み取れること

A

申請、承認、発注

72件

設計どおりの標準経路

B

申請、承認、差し戻し、申請、承認、発注

21件

差し戻しで手戻りが発生している

C

申請、発注

7件

承認を経ずに発注されている

ボトルネックと例外処理の特定

ボトルネックは、作業間の待ち時間が長く、かつ件数の多い区間として見つかります。先ほどのログ例のPO-1002では、申請から最初の承認までに約2日を要しており、承認者の確認が滞留している可能性が読み取れます。

例外処理は、件数が少なくても影響が大きい場合があります。経路Cのように承認を経ない発注は、効率の問題ではなく内部統制の論点になり得るため、コンサルとしては件数の多寡だけで優先度を決めないことが大切です。原因は現場への確認なしには断定できないので、ログで見つけた差分は「仮説」として扱い、ヒアリングで裏づけます。

プロセスマイニングを導入するメリットと注意点

メリットは業務の実態を客観的に示せること、注意点はログの品質が分析の精度を決めることです。効果が大きい場面と、期待どおりに進まない場面を分けて理解しておくと、提案時の説明が現実的になります。

属人的な業務の見える化

属人的な業務は、特定の担当者の頭の中にある手順がログとして表に出ることで、見える化できます。担当者が替わると流れが変わる、人によって承認の順序が違う、といった差も、担当者列を足せば比較できます。

見える化の結果は、担当者個人の評価に使うのではなく、業務の標準化や分担の見直しの材料として扱う方針を、導入前に現場へ伝えておくことが重要です。監視されているという印象を持たれると、現場の協力が得られにくくなります。

ログが整っていない場合の限界

ログが残らない業務や、ログの質が低い業務には、プロセスマイニングはそのままでは使えません。紙で回している作業や、セキュリティ上ログを無効にしているシステムは対象外になります。またデータに問題があると、描かれるフローが不正確になり、誤った改善策につながる点にも注意が必要です(SCSK「プロセスマイニングとは」、2026年10月参照)。

ログが不十分な現場でも、打つ手はあります。ログのある範囲だけで部分的に流れを描き、ログのない区間は担当者へのヒアリングで仮のフローを補い、取得できる範囲を広げながら精度を上げていく進め方です。全工程のログが揃うまで待つ必要はありません。

プロセスマイニングの進め方3ステップ

進め方は、対象業務とログの範囲を決める、実績フローを抽出して差分を確認する、改善施策を選んで効果を測る、の3ステップです。各ステップの入力と出力は次のとおりです。

ステップ

入力

出力

STEP1

業務一覧、解きたい問い、システム一覧

対象業務1つ、ログ項目の対応表、取得期間

STEP2

整形したイベントログ、設計上の業務フロー

経路別の件数表、設計との差分リスト

STEP3

差分リスト、現場の確認結果

施策1〜2件、測定指標、再計測の結果

対象業務の決定、実績フローの抽出、施策と効果測定の3ステップを入力と出力つきで示した手順図

STEP1 対象業務とログの範囲を決める

最初に決めるのは、問いが明確で、ログが残っていそうな業務を1つに絞ることです。全社の業務を一度に扱うと、整形の負荷が大きくなり、結果の解釈もぼやけます。

  1. 改善で解きたい問いを1文で書きます(例:発注までの日数が長い原因を知りたい)。
  2. その業務に関わるシステムを洗い出し、ログを取り出せるかを情報システム部門に確認します。
  3. 3項目に当たる列をシステムごとに対応づけ、足りない項目を記録します。
  4. 取得期間を決めます(季節変動のある業務は、繁忙期と閑散期の両方を含めます)。

出力となるログ項目の対応表は、次のような形で書くと、不足の把握とヒアリング項目の整理が同時にできます。

必要な項目

候補となる列(架空例)

状況

不足への対応

ケースID

発注番号

全件にあり

不要

アクティビティ

ステータスの変更履歴

差し戻しが記録されない

担当者へのヒアリングで差し戻しの有無を補う

タイムスタンプ

更新日時

日付のみで時刻なし

日単位の所要時間で分析する

STEP2 実績フローを抽出して差分を確認する

2つ目のステップでは、ログを整形して経路別に集計し、設計上のフローとの差分を洗い出します。差分の多くは、現場の事情を聞くまで良し悪しを判断できません。

  1. ログを3項目の形に整え、作業名の表記ゆれ(「承認」と「上長承認」など)や重複行を統一します。
  2. ケースIDごとにタイムスタンプ順へ並べ替えます。
  3. 同じ順序の経路をまとめ、件数と平均の所要時間を集計します。
  4. 設計上のフローと突き合わせ、差分を一覧にして現場へ確認します。

出力は、先ほどの経路別の件数表と、「経路Cで承認が飛ぶのはなぜか」といった確認事項つきの差分リストです。

STEP3 改善施策を選んで効果を測る

最後のステップでは、影響の大きい差分から施策を1〜2件に絞り、同じ指標で効果を測り直します。施策を欲張ると、どの変更が効いたのか分からなくなります。

  1. 件数と所要時間の両面から、影響の大きい差分を選びます。
  2. 施策案を決めます(例:承認の期限ルールの追加、申請時の入力チェックの追加)。
  3. 測定指標を決めます(例:経路Bの比率、申請から発注までの平均日数)。
  4. 施策の実施後、同じ条件でログを取り直して指標を比較します。

出力は、施策と測定指標の対応表、および施策前後の数値の比較です。数値が動かなかった場合は、STEP2に戻って差分の原因を見直します。

プロセスマイニングツールを選ぶときの比較軸5つ

ツールを選ぶ比較軸は、連携システム、ログ形式、分析画面の使いやすさ、費用、運用体制の5つです。機能の多さよりも、自社の業務とログに合うかどうかを優先します。

比較軸

確認すること

見落としやすい点

連携できるシステム

対象業務のシステムから直接取り込めるか

基幹システムとワークフローが別製品の場合

対応するログ形式

CSVなど手元のログをそのまま読み込めるか

文字コードや日時の形式の違い

分析画面の使いやすさ

現場担当者が自分で絞り込みや比較をできるか

分析担当者しか使えない設計

費用

初期費用、利用者数や処理データ量による変動

データ整形の人件費

運用体制

データの保管場所、権限管理、サポートの範囲

社外にログを出せるかの社内規程

ツール選びの比較軸である連携システム、ログ形式、分析画面、費用、運用体制を並べたチェックリスト図

連携できるシステムとログ形式

最初に見るのは、対象業務のシステムからログを取り込めるか、そしてその形式に対応しているかです。直接連携できない場合でも、CSVなどのファイルで読み込めれば、STEP1で作った対応表をそのまま使えます。

ログが整っていない現場では、まず手元のファイルを読み込める柔軟さのあるツールが向いています。システム連携を前提にした製品は、導入前の準備に時間がかかる傾向があるため、対象業務の範囲と照らして判断します。

分析画面の使いやすさと費用

分析画面は、現場担当者が自分で絞り込みと比較をできるかで評価し、費用は利用条件ごとの変動も含めて見積もります。分析担当者だけが使える製品では、現場との対話の中で仮説を検証しにくくなります。

費用は、初期費用に加えて、利用者数やデータ量で変わる料金体系が一般的です。さらにログの整形にかかる人手も無視できません。無料トライアルがあれば、自社のログを実際に読み込ませて、整形にどれだけ手間がかかるかを確かめてから比較すると失敗が減ります。データの保管場所や権限管理は、情報システム部門や法務と早めに確認しておきます。

コンサルがプロセスマイニングを提案するときの確認点

提案前に確認するのは、ログの有無と持ち主、解きたい問いと対象範囲、導入後に誰が運用するかの3点です。この3点が曖昧なまま提案すると、分析を始めてから前提が崩れます。

確認点

先方に聞くこと

答えによる判断

ログの有無と持ち主

対象業務のログは残っているか。誰が管理し、提供してもらえるか

ログがなければヒアリング中心の進め方に切り替える

問いと対象範囲

何を知りたいか。対象にする業務と期間はどこまでか

問いが広すぎれば、1業務に絞る提案にする

導入後の運用者

分析と再計測を誰が続けるか

運用者がいなければ、定着までを支援範囲に含める

大手企業の案件では、法人を挟んだ3者間契約で参画するケースが多いとされています(編集部の整理)。その場合、ログの持ち出しや機密保持の範囲は、契約の窓口を通じて事前にすり合わせておくと、分析の開始が遅れにくくなります。個別の契約条件は案件ごとに異なるため、最終的には契約書と先方の規程で確認してください。

現場ヒアリングとログ分析の使い分け

ログ分析は「何がどれだけ起きているか」を示し、ヒアリングは「なぜ起きているか」を明らかにします。どちらか一方だけでは、改善案の根拠として弱くなります。

知りたいこと

向いている方法

理由

経路ごとの件数と所要時間

ログ分析

人の記憶より正確に数えられる

差し戻しが起きる理由

現場ヒアリング

ログには理由が残らないことが多い

ログのない区間の作業

現場ヒアリング

記録がないため、聞き取りで補うしかない

施策後の変化

ログ分析

同じ指標で前後を比べられる

  1. ログで全体像をつかみ、件数の多い経路と例外を洗い出します。
  2. 気になる差分について、担当者に理由を聞きます。
  3. 聞き取りで得た仮説を、再びログで検証します。

この往復を1〜2回行うだけで、ログが整っていない現場でも、改善提案の根拠を実績と現場の声の両方で示せるようになります。

出典・参考情報

  1. IT用語辞典 e-Words「プロセスマイニングとは」(2026-10-19参照):定義に関する参照情報
  2. SCSK IT Platform Navigator「プロセスマイニングとは?導入のメリットと限界、事例までわかりやすく解説」(2026-10-19参照):イベントログの3項目と限界に関する参照情報

本記事の内容は2026年10月19日時点の情報に基づきます。表の数値は説明用の架空の例です。実際の導入可否や進め方は、対象業務とシステムの状況に応じて、情報システム部門などの専門家とご確認ください。

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