マーケティングにおけるデータ分析の活用法

マーケティングにおけるデータ分析の活用法

マーケティングにおけるデータ分析とは、顧客の行動データや取引データをもとに優先して働きかけるべき顧客層を見極め、実施した施策の効果を数値で検証する一連の取り組みです。本記事では、データ分析が使われる代表的な場面から、RFM分析・LTV分析といった主要なフレームワーク、分析結果を施策に落とし込む流れ、独立コンサルタントが支援に入る際の進め方までを整理して解説します。

マーケティングでデータ分析が使われる場面

マーケティングにおけるデータ分析は、主に顧客をグループ分けする顧客セグメンテーションと、実施した施策の効果を数値で確かめる施策効果測定という2つの場面で使われます。

顧客セグメンテーションは「誰に、何を届けるか」を決めるための分析で、配信内容や案内するキャンペーンの出し分けの土台になります。一方の施策効果測定は「実施した施策が本当に成果を生んだか」を確認するための分析で、次の予算配分や施策の継続・終了の判断材料になります。

総務省が実施した調査によると、デジタルデータを収集・解析している企業のうち、目的として最も多いのは「効率化・業務改善」(91.2%)で、「顧客サービス向上」を目的に挙げた企業は29.4%にとどまります(総務省「令和7年 通信利用動向調査報告書(企業編)」2025年、p.28 図表6-3)。同調査では、個人データを活用または活用を検討している企業のうち「既存事業やビジネスモデルの拡大や強化のための自社内での活用」が89.1%と最も多く、「新規事業や新たなビジネスモデルの創出のための自社内での活用」は38.1%にとどまっています(同報告書 p.38 図表7-4)。マーケティング領域でのデータ活用は、社内の業務効率化に比べるとまだ発展途上にある企業が多いのが実情です。だからこそ、限られたデータ活用のリソースをどの指標に振り向けるかという優先順位の付け方が、成果の差を生みやすい領域だといえます。

顧客セグメンテーション

顧客セグメンテーションとは、購買履歴や属性データをもとに顧客を似た特徴を持つグループに分け、グループごとに異なるアプローチを設計する手法です。

代表的な分け方には、年齢・地域・職業などの属性による分類、購入頻度や利用サービスなどの行動による分類、そして直近の購入日・購入頻度・購入金額という複数の購買指標を組み合わせるRFM分析のような分類があります。属性だけで分けると同じグループ内でも購買行動が大きく異なることがあるため、行動データを組み合わせて精度を高めるのが一般的です。

例えば、同じ「30代・会社員」という属性でも、月に何度も購入するリピーターと、1年に1回しか購入しない顧客とでは、有効なアプローチが大きく異なります。前者には新商品の先行案内、後者には休眠顧客向けの再訪促進というように、セグメントごとに施策を出し分けることで、限られた予算の中でも費用対効果を高めやすくなります。

施策効果測定

施策効果測定とは、実施したキャンペーンや広告施策が売上や顧客行動にどの程度の変化を与えたかを、数値データで検証する作業です。

代表的な方法には、施策の実施前後の指標を比較する前後比較と、施策を実施したグループと実施していないグループを比べるA/Bテストがあります。前後比較は手軽に実施できる一方、季節要因や競合の動きなど他の要因の影響を排除しにくいという弱点があります。A/Bテストは要因を切り分けやすい一方、対象グループを分けるための設計と一定の母数が必要になるため、実施のハードルは前後比較より高くなります。

どちらの方法を選ぶ場合も、施策を始める前に「何をもって成功とするか」の指標をあらかじめ決めておくことが前提になります。指標を決めずに施策を実施すると、後から都合の良い数値だけを取り上げて効果を判断してしまうリスクがあるため、注意が必要です。

顧客データ分析が顧客セグメンテーションと施策効果測定の2つの用途に分かれることを示す図解

代表的な分析フレームワーク

マーケティングのデータ分析で広く使われる代表的なフレームワークが、顧客の購買行動を軸に評価するRFM分析と、顧客一人当たりの将来収益を見積もるLTV分析です。

RFM分析・LTV分析

RFM分析とは、顧客を「Recency(直近の購入日)」「Frequency(購入頻度)」「Monetary(購入金額)」という3つの指標で評価し、優良顧客から離反リスクの高い顧客までをグループ分けする手法です。

3つの指標をそれぞれスコア化して組み合わせることで、単純な購入金額のランキングだけでは見えにくい「最近来店していない元優良顧客」のような層を把握できる点が特徴です。具体的なセグメント分けの一例を示すと、次のとおりです(架空の例です)。

セグメント例

特徴

想定されるアプローチ

優良顧客

直近の購入が新しく、頻度・金額とも高い

新商品の先行案内、上位ランクへの招待

継続顧客

頻度は高いが1回あたりの金額は中程度

クロスセル・アップセルの提案

離反予備軍

過去の頻度・金額は高いが直近の購入が途絶えている

休眠復帰を促すリマインド施策

新規顧客

購入は直近だが頻度・金額の実績が少ない

2回目購入を促すフォローアップ

休眠顧客

直近の購入が古く、頻度・金額とも低い

再訪の負荷が低い施策に絞って様子を見る

注記

ここで示したセグメント名称・区分は説明のための一例です。実際の閾値は業種・商材によって異なるため、自社データで区切り方を検証する必要があります。

LTV(顧客生涯価値)分析とは、1人の顧客が取引を続ける期間中にもたらす利益の合計を見積もる考え方です。

簡易的には「平均購入単価×購入頻度×継続期間」で試算されることが多く、新規顧客の獲得コストとLTVを比較することで、どの経路で獲得した顧客にどこまで広告費をかけてよいかの判断材料になります。RFM分析が「今の顧客をどう扱うか」を整理する手法であるのに対し、LTV分析は「将来どれだけの利益が見込めるか」を測る手法です。この違いを踏まえておくと、2つの手法を使い分けやすくなります。

RFM分析で使う直近購入日・購入頻度・購入金額の3指標から顧客グループを分類する図解

分析結果を施策に落とし込む流れ

データ分析の結果を実際の施策に落とし込む流れは、仮説設定・分析・示唆抽出・施策設計・実行・効果測定という6つの工程を繰り返すサイクルとして整理できます。

  1. 仮説設定:どの顧客層にどのような課題がありそうかを、事前に仮説として立てます。
  2. 分析:顧客セグメンテーションやRFM分析などの手法でデータを整理し、仮説を検証します。
  3. 示唆抽出:分析結果から、次に取るべきアクションの方向性を言語化します。
  4. 施策設計:抽出した示唆をもとに、配信内容やタイミング、対象セグメントなど具体的な施策を設計します。
  5. 実行:設計した施策を実行します。
  6. 効果測定:前後比較やA/Bテストといった手法で結果を検証し、次の仮説設定に反映します。

この一連の流れの土台となる、データの収集・整理・可視化・分析・行動という基本ステップについては、分析の基本ステップを確認するで詳しく解説しています。

実務でつまずきやすいのは、分析そのものよりも示唆抽出から施策設計への橋渡しです。分析結果を眺めるだけで終わらせず、次に何をするかまで具体化できるかどうかで、データ分析が実際の成果につながるかが分かれます。

仮説設定から効果測定までの6工程を繰り返すデータ分析のサイクルを示すフローチャート

独立コンサルタントが支援する際の進め方

独立コンサルタントがマーケティングのデータ分析を支援する際は、まずデータの整備状況を確認することから着手し、そのうえでどの指標から改善に取り組むかの優先順位を提案する進め方が一般的です。

契約形態としては、成果物の完成を約束する請負契約ではなく、分析・改善提案という業務の遂行そのものに対して報酬が発生する準委任契約で契約するケースが多く見られます。契約期間は3〜6カ月程度で区切られることが一般的です。あらかじめ分析対象のデータや期間、報告の頻度をすり合わせておくことで、稼働範囲の認識のずれを防ぎやすくなります。

コンサルタントの歩み編集部が独立コンサルタント複数名に行った取材では、支援に入って最初に着手する対象として、売上や会員数といった全社的なKPIではなく、まず「データがどこまで揃っているか」「更新頻度はどの程度か」といったデータの整備状況を確認する声が多く聞かれました。分析対象のデータが月次でしか更新されない、あるいは項目によって表記が揺れているといった状態のまま高度な分析に着手すると、後の工程でやり直しが発生しやすいためです。そのうえで優先度の高い指標としては、新規獲得よりもまず既存顧客のリピート率や離反率など、比較的短い期間で変化を確認しやすい指標から着手するという判断をするコンサルタントが多いという声も聞かれました。全社的な成果に直結する指標ほど変化が表れるまでに時間がかかるため、まず動きの早い指標で分析の型を検証し、そのうえで規模の大きい指標に広げていく進め方です。

支援の初期段階では、既存のデータを使ってRFM分析のような簡易的なセグメンテーションを試作し、支援先の意思決定者と「このセグメント分けで実務上の意思決定に使えそうか」をすり合わせる進め方も有効です。分析の精度を高めることよりも、まず現場で使われる分析にすることを優先する姿勢が、支援先との信頼関係を築くうえで重要になります。

独立コンサルタントが支援先で複数の指標の中から優先して着手するものを選び出している様子

まとめ

マーケティングにおけるデータ分析は、顧客をグループ分けする顧客セグメンテーションと、施策の効果を数値で検証する施策効果測定という2つの場面で使われ、RFM分析やLTV分析といったフレームワークがその土台になります。分析結果は、仮説設定から効果測定までのサイクルを繰り返しながら施策に落とし込んでいくものであり、独立コンサルタントが支援する際も、まずデータの整備状況を確認し、変化を確認しやすい指標から着手するという優先順位の付け方が実務では重視されています。

出典・参考情報

  1. 総務省「令和7年 通信利用動向調査報告書(企業編)」(2026-09-09参照):デジタルデータの収集・解析の目的、個人データの活用方法に関する統計データの出典

本記事は2026年9月時点の情報に基づいています。

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