経営企画コンサルタントが作成する資料は、意思決定者がその場で判断できる構成になっているかどうかで評価が分かれます。本記事では、経営会議資料・中期経営計画資料に共通する構成の型と、独立後の案件で資料作成スキルがどのように評価されるかを、コンサルタントの歩み編集部の独自調査を交えて整理します。
経営企画コンサルタントの資料作成における基本の型
この記事の結論:経営企画資料は「意思決定者の論点」から逆算して構成する
経営企画資料の質は、情報量ではなく意思決定者が確認したい論点を外さずに構成できているかで決まります。見た目の美しさや情報の網羅性を先に追い求めると、かえって会議当日の質疑で論点が発散しやすくなります。
一般的なプレゼン資料との違い
一般的な提案資料が読み手の関心を段階的に引き上げる構成であるのに対し、経営企画資料は意思決定者の承認・保留・却下という判断に直結する構成が求められます。
営業提案書やセミナー資料では、背景説明から入って興味を高めていく起承転結型の構成が効果的とされる場合があります。一方で経営会議は持ち時間が限られており、読み手はすでに経営課題を把握している前提で臨みます。そのため背景説明よりも結論と根拠を先に示す構成の方が、会議の場では機能しやすくなります。
経営企画資料に共通する設計思想
経営企画資料に共通するのは、意思決定者が抱く疑問を先回りして章立てに組み込む設計思想です。
経営会議に出す資料でも中期経営計画の資料でも、共通しているのは「この数字はなぜこの水準なのか」「リスクは検討したのか」といった意思決定者が抱きやすい疑問を、目次を組む段階で先回りして潰しておく点です。想定される質問を先に洗い出してから章立てを組むことで、会議中に資料へ立ち返る回数が減り、その場での意思決定が進みやすくなります。コンサルタントの歩み編集部が経営企画部門出身のコンサルタント複数名に取材したところ、資料の質を評価する際に真っ先に見られているのは見た目の美しさではなく、この「論点の先回り」ができているかどうかでした。
資料作成前に整理すべきこと
資料に着手する前に、会議の意思決定事項と想定される論点を言語化しておくことが、遠回りに見えて最短ルートになります。
会議の目的・意思決定事項の明確化
経営会議資料を作る前に、その会議で何を承認してもらうのかを一文で言語化する作業が欠かせません。
経営会議の運営に関する専門家の解説でも、本来はミドル層で意思決定できる議題までもが経営会議に上がってきやすい点や、アジェンダに応じて議論・意思決定の判断軸を明確にする必要性が指摘されています。資料の1ページ目に着手する前に、今回の会議で得たい意思決定を承認・情報共有・討議のいずれかに分類し、目的に応じて資料の詳しさを調整することが、この後の工程全体の精度を左右します。
想定される論点・質問の洗い出し
資料の骨子を組む前に、意思決定者から出そうな質問を最低5つ書き出しておくと、章立ての抜け漏れが減ります。
具体的には「なぜこの施策なのか」「代替案は検討したのか」「必要な投資額と回収期間はどの程度か」「実行体制は誰が持つのか」「うまくいかなかった場合の撤退基準は何か」といった論点を事前に洗い出し、それぞれに対応するページを資料内に用意しておきます。論点が洗い出せていない状態で作成を始めると、会議当日に想定外の質問で議論が発散し、資料への差し戻しが発生しやすくなります。
経営会議資料の基本構成
経営会議資料は、結論、現状分析、打ち手という3つのパートを基本構成とし、この順番を崩さないことが重要です。
サマリー・結論ファーストの型
資料の冒頭1〜2ページに結論と意思決定してほしい内容を明記するサマリーを置くのが基本形です。
サマリーページには「現状の課題」「提案する打ち手」「必要な意思決定事項」の3点を簡潔に記載します。詳細な分析や根拠は後続ページに譲り、サマリーだけを読めば会議の論点が把握できる状態にしておくことで、時間の限られた経営会議でも要点を外さずに議論を始められます。
現状分析・課題整理のパート
現状分析パートでは、事実とその解釈を分けて記載し、課題の因果関係を明確にすることが求められます。
売上や利益率といった事実データと「なぜその数値になっているのか」という解釈を混在させて書くと、意思決定者が事実確認に時間を取られてしまいます。事実(ファクト)、解釈(なぜそうなっているか)、課題(何が問題か)の3層に分けて記載すると、読み手が資料のどこを事実として受け止め、どこを議論すべき解釈として捉えればよいかが明確になります。
具体的な目次構成のイメージは次のとおりです。あくまで一例であり、議題の性質に応じてページ構成は前後します。
ページ | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
1 | サマリー(結論・意思決定事項) | 会議の論点を最初に共有する |
2〜3 | 現状分析(ファクト・課題) | 問題認識を揃える |
4〜5 | 打ち手・アクションプラン | 具体的な実行案を示す |
6 | 必要な投資・体制・スケジュール | 実行可能性を判断してもらう |
7 | リスクとその対応策 | 意思決定のリスクを事前に共有する |

打ち手・アクションプランのパート
打ち手パートでは、施策の内容だけでなく実行体制・スケジュール・必要投資までセットで示す必要があります。
「何をやるか」だけを書いた資料は、会議で「誰がいつまでにやるのか」という質問を招きやすくなります。打ち手ごとに担当部門、スケジュール、必要な予算・人員を併記し、実行段階まで見通せる粒度で記載することで、その場での承認判断がしやすくなります。
中期経営計画資料に特有のポイント
中期経営計画資料では、単年度の会議資料以上に、数値計画の前提条件とリスクを明記することが重視されます。
数値計画の見せ方
中期経営計画の数値目標は、算定根拠となる前提条件とセットで示すことで説得力が増します。
日本取引所グループが示す考え方でも、中期経営計画で開示する計画値・目標値は成長戦略の内容を踏まえた合理的なものである必要があり、根拠のない予測情報は投資者に誤解を与えるおそれがあると整理されています。社内向けの経営会議資料であっても考え方は共通しており、売上や利益の数値目標を示す際は、その数値がどのような前提(市場成長率、シェア想定、投資計画など)から算出されたのかを併記することで、数値への納得感が高まります。
前提条件・リスクの記載の仕方
前提条件とリスクは切り離さず、前提が崩れた場合にどのリスクが顕在化するかをセットで記載します。
同じく日本取引所グループの整理では、中期経営計画の開示にあたって背景と前提条件・根拠・リスク要因を具体的に説明することが求められるとされています。社内資料でもこの考え方は流用でき、たとえば「為替が想定レンジを超えて円安に振れた場合、原材料コストが計画比で増加する」というように、前提条件とリスクを対にして記載すると、意思決定者はどこまでが計画の許容範囲かを判断しやすくなります。
資料の質を高めるビジュアル・ストーリーライン設計
資料の見やすさは、装飾ではなく1スライド1メッセージの徹底とストーリーラインの一貫性で決まります。
1スライド1メッセージの原則
1枚のスライドで伝える主張は1つに絞り、それをそのままスライドタイトルに反映させます。
経営企画資料に限らず資料作成全般で広く実践されている原則ですが、1枚のスライドに複数の論点を詰め込むと、意思決定者はどの情報を根拠に何を判断すればよいのかが分からなくなります。スライドを作る前に「このページで伝えたいことを一文で言うと何か」を書き出し、その一文をタイトルにするという手順を徹底するだけでも、資料全体の論点がぶれにくくなります。具体的な要素の分け方は次のとおりです。
要素 | 内容例 |
|---|---|
タイトル(メッセージ) | 「A事業の粗利率は競合比で低く、原価構成の見直しが必要」 |
根拠(グラフ・数値) | 自社と競合の粗利率比較グラフ、原価内訳の構成比 |
示唆 | 原価構成のどこにボトルネックがあるかの一言 |

グラフ・図解の選び方
グラフは伝えたい主張に応じて棒・折れ線・円のいずれかを選び、装飾より正確な比較を優先します。
推移を見せたいなら折れ線、項目間の大小を比較したいなら棒グラフ、構成比を見せたいなら円または帯グラフというように、伝えたい内容とグラフの型を一致させることが基本です。色数を増やしすぎたり立体的な装飾を加えたりすると、かえって数値の比較がしづらくなるため、経営会議資料では強調したい系列だけに色をつけ、それ以外は控えめな配色で統一するといった工夫が有効です。
陥りやすい失敗パターン
経営企画資料でもっとも多い失敗は、情報の詰め込みすぎと結論の後回しという2つのパターンです。
情報を詰め込みすぎて論点がぼやけるケース
調査した情報をすべて盛り込もうとすると、かえって論点がぼやけて意思決定が遅れます。
経営企画部門は分析力が高いため、集めたデータをできるだけ多く資料に反映しようとする傾向があります。しかし、意思決定に直接関係しない補足データまで本編に含めると、読み手はどの情報を根拠に判断すればよいか分からなくなります。参考データは巻末に移し、本編は意思決定に必要な最小限の情報に絞ることで、論点が明確になります。
結論が後回しになるケース
背景説明から始めて結論を最後に置く構成は、時間の限られた経営会議では不向きです。
現状分析やこれまでの経緯を丁寧に説明してから結論に至る、いわゆる時系列型の構成は、資料を読む時間が十分にある場面では有効です。しかし経営会議のように意思決定までの時間が限られる場では、結論を先に示さないと質疑の途中で時間切れになりがちです。資料の構成に迷ったときは、常に「意思決定者がこの資料に何を求めているか」という論点に立ち返ることが、経営企画資料作成における基本の型といえます。
独立コンサルタント視点で見る資料作成スキルの活かし方
資料作成スキルは独立後もマネージャー以上の案件で継続的に評価される、汎用性の高い専門スキルです。
資料作成スキルが評価される案件領域
経営企画部門で培った資料作成スキルは、独立後は経営会議資料の代行や中期経営計画策定支援といった案件領域で評価されます。
フリーランスとして独立した経営企画出身コンサルタントの経営企画コンサルタントの案件領域を見ると、経営会議資料や取締役会資料の作成代行、中期経営計画の策定支援といった、本記事で扱った資料作成・ストーリーライン設計のスキルがそのまま評価される案件が一定数存在します。コンサルタントの歩み編集部が確認したエージェント経由の実績データでは、こうしたアウトプット力が評価されるマネージャー相当以上のクラスの案件では、月額180万円前後、シニアマネージャー以上では月200万円を超えるレンジで契約が成立するケースもあるとされます。ただし単価は案件の難易度や稼働率によって変動するため、あくまで目安として捉える必要があります。
独立後に求められる資料作成の工数感
独立後の資料作成案件は、事業会社在籍時よりも短納期・少人数での対応が求められる傾向があります。
事業会社に在籍している間は、資料作成をチームで分担したり上司の確認を経て段階的に仕上げたりする時間的余裕がある場合が多いですが、独立後にクライアント企業から依頼される資料作成案件では、限られた打ち合わせ回数と短い納期の中で、一人で骨子から仕上げまで担うケースが多くなります。独立を検討している段階から、こうした工数感や進め方の違いを把握しておくと、案件参画後のギャップを減らせます。より具体的な準備の進め方は経営企画コンサルタントの独立準備を見るで整理しています。

よくある質問
Q. 経営企画コンサルタントに資料作成スキルは必須ですか。
経営企画部門の業務では資料作成が中心的な役割の1つであるため、実務上ほぼ必須のスキルとされています。とくに独立後は資料そのものが成果物として評価される案件が多く、身につけておく価値の高いスキルです。
Q. 経営企画の資料作成のコツを一言で言うと何ですか。
意思決定者が確認したい論点を洗い出し、結論から逆算して構成することが最大のコツです。装飾やデザインよりも、この構成の設計に時間をかける方が資料の評価は高くなる傾向にあります。
Q. 経営企画コンサルタントとして独立する準備はいつから始めるべきですか。
資料作成スキルを含む実務経験の棚卸しは、独立を決める前の在籍中から始めておくことが望ましいとされています。パワーポイントの構成力や中期経営計画資料の作り方をどこまで一人で担えるかを、在籍中に確認しておくと準備がスムーズになります。
Q. 経営会議資料と中期経営計画資料の違いは何ですか。
経営会議資料は個別の議題に対する意思決定を目的とするのに対し、中期経営計画資料は数年単位の数値目標と前提条件を体系的に示す点が異なります。ただし、結論を先に示し論点を先回りして構成するという基本的な考え方は共通しています。
本記事は2026年9月時点の情報に基づき作成しています。
出典・参考情報
- 日本取引所グループ「新たに中期経営計画を開示することとしましたが、『事業計画及び成長可能性に関する事項』の開示との関係で留意することはありますか。」(2026-09-19参照):数値計画の合理性、前提条件・根拠・リスク要因の記載に関する参考情報
- GLOBIS「経営会議をアップデートし、企業競争力を高める」(2026-09-19参照):経営会議のアジェンダ設定・判断軸に関する参考情報
- コンサルタントの歩み編集部によるエージェント経由の実績データ(2026年9月時点):独立後の資料作成関連案件における単価レンジの参考情報
本記事のデータは2026年9月19日時点の情報に基づきます。最新の制度・相場については各公式情報をご確認ください。
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