ITILエキスパート資格とは?位置づけと取得までの道のり

ITILエキスパート資格とは?位置づけと取得までの道のり

ITILエキスパートは、ITIL v3の認定試験に基づく資格体系のなかで到達できる最上位の資格で、Foundation・Intermediate・MALCを積み上げた合計22クレジットによって認定されます。ただし、日本語版の受験機会は2023年7月31日に終了しており、2026年時点では新規に取得する経路がありません。本記事では、資格としての位置づけ・取得の仕組み・独立コンサルタントとしての活かし方、そしてITIL4への移行に伴う現在の選択肢までを整理して解説します。

ITILエキスパートとは何か

ITILエキスパートは、ITIL v3の認定試験に基づく資格体系のなかで到達できる最上位の資格で、合計22クレジットの積み上げによって認定されます。

v3資格体系における最上位レベルの位置づけ

ITIL v3の資格体系は、基礎知識を問うFoundation、専門分野別の知識を問うIntermediate、そしてIntermediateの上位に位置するExpertという構成になっています。Intermediateには、Service Strategy・Service Design等5科目の「ライフサイクル系」と、Service Offerings and Agreements(SOA)等4科目の「ケイパビリティ系」があり、ITILエキスパートはこの上位資格として位置づけられています。なお、Expertのさらに上にはMasterという段階が存在しますが、Masterは筆記試験ではなく実務での適用実績に関する審査によって授与される別枠の資格であり、通常の学習・受験によるキャリアパスとしてはExpertが到達点になります。

重要な留意点として、ITIL v3の日本語版試験(Foundation・Practitioner・Intermediateの4科目・MALC)は2023年7月31日をもって提供が終了しています。試験バウチャーの有効期限が残っていても、終了日以降は予約・受験ができない扱いとされました。そのため2026年現在、この記事で扱うITILエキスパートを新たに受験・取得する経路はありません。既に保有している方が資格をどう位置づけ、独立後にどう扱うかを理解するための情報として、本記事を活用してください。

必要クレジット数と到達要件

ITILエキスパートの認定条件は、Foundationの2クレジット、Intermediateで積み上げる15クレジット以上、MALC(Managing Across the Lifecycle)の5クレジットを合わせた合計22クレジット以上の取得です。Intermediateはライフサイクル系の各科目が3クレジット、ケイパビリティ系の各科目が4クレジットとされており、両者を組み合わせて15クレジット以上を満たす必要がありました。

またMALCを受験するには、Foundationとインターミディエイトの合計で17クレジット以上を取得していることが前提条件になります。この17クレジットの壁を越えたうえでMALCの5クレジットを加えることで、初めて22クレジットに到達しExpertの認定要件を満たすという、段階を踏んだ積み上げ式の制度でした。

エキスパート取得までの道のり

エキスパートまでの標準的な道のりは、Foundation合格後にIntermediateの科目を複数選び、17クレジット以上を確保したうえでMALCに合格するという順序をたどります。

Foundation・Intermediateからの積み上げ方

最初のステップはFoundation試験の合格で、ここで2クレジットを得ます。次にIntermediateの科目選択に入りますが、進め方には大きく2通りがありました。ひとつは「ライフサイクル系」5科目(Service Strategy・Service Design・Service Transition・Service Operation・Continual Service Improvement)を中心に積み上げる方法、もうひとつは「ケイパビリティ系」4科目(SOA・PPO・OSA・RCV)を中心に積み上げる方法です。ライフサイクル系は各3クレジット、ケイパビリティ系は各4クレジットのため、ケイパビリティ系を選ぶほうが少ない科目数で必要クレジットに届きやすい設計になっていました。両系統を組み合わせて受験することも可能で、自身の業務経験に近い科目から着手するのが一般的な進め方だったとされています。

Foundation・Intermediate・MALCのバッジが積み重なり22の目盛りに到達するゲージ模型を表したイメージ図

MALC(統合講座)の位置づけ

MALC(Managing Across the Lifecycle)は、個別のIntermediate科目で学んだ知識をサービスライフサイクル全体の視点で統合する、Expert取得の最終関門にあたる講座・試験です。受験するにはFoundationとIntermediateで合計17クレジット以上を確保している必要があり、この条件を満たして初めてMALCの受講・受験に進めます。試験は選択式10問・制限時間120分で、正答率70%以上が合格基準とされていました。MALCに合格して5クレジットを加算することで、合計22クレジットに到達しExpertとして認定される、という流れです。

FoundationからIntermediate・MALCへと続く道に17クレジット・22クレジットの立て札が置かれた道のりを示すイメージ図

取得にかかる期間・コストの目安

現役当時のExpert取得は、Foundationから数えて研修だけで合計20日前後、費用は総額で100万円を超える水準が一般的でした。

標準的な学習期間

研修会社が提供していたコースを見ると、Intermediateの各科目は1科目あたり講習5日間+試験というボリュームが一般的で、MALCも講習5日間が標準でした。仮に22クレジットに必要な最短構成(ケイパビリティ系4科目+MALC)で積み上げる場合でも、講習だけで20日を超える計算になります。実務と並行して受講するケースが多く、実際の取得までには数ヶ月から1年程度を要したという声も少なくありませんでした。

研修費用の目安

費用面では、Intermediate1科目あたり講習・試験込みで30万〜40万円程度、MALCも講習・試験込みで30万円程度とされていました。個別に積み上げる場合は合計150万円前後に達する計算になる一方、Foundation保有者向けにIntermediate4科目+MALCをまとめて提供する研修パックでは、受講期間14日間・費用105万円(税抜)という設定も見られました。企業が研修費用を負担するケースが多かった背景には、この費用水準の高さも影響していたと考えられます。

独立コンサルタントとしての活かし方

独立コンサルタントにとってITILエキスパートは、大規模なIT運用・ITサービスマネジメント案件の提案フェーズで実務理解の深さを裏づける信頼材料として機能します。ITILの全体像を確認すると、この信頼材料としての位置づけがより理解しやすくなります。

大規模IT運用案件での信頼材料としての価値

IT運用・ITサービスマネジメント領域で独立した場合、DX・ITコンサルタントの月額単価はおおむね100万〜160万円が中心帯(平均約120万円)で、IT戦略領域では150万〜200万円まで上振れる水準とされています。この業界で「高単価」と呼べる水準は月額200万円以上が目安で、上流工程やシニアマネージャー相当の役割で実現しやすいとされています。資格が単価に与える影響を含めた単価水準の全体像は、DXコンサルタントの単価相場も合わせて確認すると把握しやすくなります。

ただし、資格そのものが単価を直接引き上げるわけではない点には注意が必要です。単価を左右するのは資格の有無よりも担当したプロジェクトの規模や役割の大きさであるという傾向は、PM/PMO関連の資格を検討する際にも共通して指摘されています。コンサルタントの歩み編集部が独立系ITコンサルタント数名に行った聞き取りでも、エキスパートという資格名そのものを理由に単価が上がったという実感を持つ人は少数派で、むしろ大規模な基幹システムの運用改革やITSM基盤構築案件の提案フェーズで、発注担当者からの信頼を得やすくなったという声が目立ちました。実務経験と組み合わせて語れる資格として位置づけるのが、実態に近いといえます。

大規模なIT運用管理モニターの前に認定バッジを添えた提案資料が置かれている情景を表したイメージ

まとめ

ITILエキスパートはIntermediateとMALCの積み上げによって認定される、v3資格体系の到達点でしたが、日本語試験は2023年7月31日に終了しており新規取得はできません。

要点の整理

ここまでの内容を整理すると、次の3点になります。第一に、ITILエキスパートはFoundation・Intermediate・MALCの合計22クレジットで認定される、認定試験に基づく資格の中では最上位の資格でした。第二に、取得には研修だけで20日を超え、費用も100万円を超える水準を要する重い投資でした。第三に、独立コンサルタントにとっての価値は単価を直接押し上げることではなく、大規模なIT運用案件の提案フェーズで実務理解を裏づける信頼材料として機能する点にあります。

ITIL4資格体系との違いへの導線

現在PeopleCertが認定機関として運営するのはITIL4で、Foundationを起点にマネージング・プロフェッショナル(MP・4資格)、ストラテジック・リーダー(SL・3資格)、プラクティス・マネージャー(PM・3モジュール)という3つのストリームに分かれる体系に再編されています。3ストリームすべてを取得すると自動的にITIL4マスターが授与される仕組みで、v3のExpert・Masterとは科目構成も認定条件も異なります。ITIL v3のエキスパート保有者が新たな案件で資格の現在価値を語る場合は、ITIL4の体系との対応関係を理解したうえで説明する必要があります。試験料の目安はFoundationが76,385円、MP/SL/PM各試験が93,455円(いずれも税込)です。

出典・参考情報

  1. ITプレナーズ「【速報】ITIL® v3試験提供終了予定のお知らせ」(2026-09-17参照)
  2. 富士通ラーニングメディア「ITIL(R)v3試験の提供終了について」(2026-09-17参照)
  3. Advisera「ITIL Certification Path」(2026-09-17参照)
  4. livescamp.com「ITIL Expert(アイティル エキスパート)資格」(2026-09-17参照)
  5. livescamp.com「ITIL Intermediate(アイティル インターミディエイト)資格」(2026-09-17参照)
  6. PeopleCert公式サイト「ITIL®4資格体系」(2026-09-17参照)
  7. マイナビ転職エンジニア「【ITIL資格一覧】試験概要や取得方法、難易度、受験料について解説」(2026-09-17参照)

本記事の内容は2026年9月17日時点の情報に基づきます。ITIL関連の認定制度は改定される場合があるため、最新情報はPeopleCert公式サイト等でご確認ください。

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