業務効率化のフレームワークは、課題を見つける型と改善案を考える型を分けて使うと、迷わず進められます。業務フローの見える化や時間の棚卸しで課題を洗い出し、ECRSで改善案を出し、効果と負担で優先順位を付ける流れです。
業務効率化のフレームワーク|課題を見つけ改善案を選ぶ手順
この記事では、目的の整理から定着の確認までを5つの段階に分けて説明します。あわせて、自社だけで進めるか外部の専門家やツールを使うかを判断する目安も紹介します。管理部門の担当者にも、改善案件を支援するコンサルタントにも使える内容です。2026年10月時点の情報に基づいています。
業務効率化を考える前に
最初に決めるのは、何のために効率化するのかと、どうなれば成功とみなすかの2点です。この2点が曖昧なまま型だけを当てはめても、改善案の良し悪しを判断できません。
目的の整理
効率化の目的は、「残業を減らす」「処理の件数を増やす」「ミスを減らす」「担当者が変わっても回る状態にする」のように、1つの文で言える形にします。目的が複数あるときは、優先する順に並べておきます。
たとえば経費精算の業務なら、「月末の締め作業が特定の1人に集中している状態を解消する」と書けば、改善案の方向が決まります。目的が「何となく楽にしたい」だと、ツールを入れること自体が目的になりやすくなります。
効果の測り方
効果は、改善の前と後で比べられる数字で測ります。代表的なのは、1件あたりの作業時間、1か月の総作業時間、手戻りやミスの件数、依頼から完了までの日数の4つです。
改善を始める前に、現状の数字を一度測っておきます。細かい精度は求めず、担当者2〜3人に1週間記録してもらう程度で足ります。この数字がないと、改善後に「速くなった気がする」で終わってしまい、次の判断材料になりません。
課題発見に使える型
課題を見つける型は、業務フローの見える化と時間の棚卸しの2つが基本です。前者は「どこで止まっているか」を、後者は「どこに時間がかかっているか」を教えてくれます。
業務フローの見える化
業務フローの見える化は、業務の開始から完了までの工程を順に書き出し、誰がどの工程を担当し、どこで待ちが生じるかを図にする手法です。丁寧な図にする必要はなく、付箋やメモで工程を並べるだけでも十分に役立ちます。
次の手順で進めると、初めてでも形になります。
- 対象の業務を1つに絞る(入力:業務の名前と担当者/出力:対象範囲を書いた1行のメモ)
- 開始の合図と完了の状態を決める(入力:現場の担当者へのヒアリング/出力:「何が届いたら始まり、何ができたら終わりか」の定義)
- 工程を1つずつ書き出す(入力:実際の作業記録やメールのやり取り/出力:工程の一覧)
- 工程ごとに担当者と待ちを書き込む(入力:工程の一覧/出力:担当者と待ちの発生箇所が入った業務フロー)
書き方のひな型は、業務フローの作り方でも整理しています。図の描き方そのものは業務フロー図の書き方が参考になります。
時間の棚卸し
時間の棚卸しは、業務を工程や作業の種類に分け、それぞれにかかる時間を書き出す手法です。業務フローで見つけた工程に、時間という数字を足すイメージです。
架空の例として、月次の経費精算を担当者3人で処理している場面を考えます。作業を分けて時間を集計すると、次のような表になります。
作業 | 月あたりの時間(例) | 気づきの例 |
|---|---|---|
紙の領収書の転記 | 12時間 | 同じ内容を申請書にも手入力している |
不備の確認と差し戻し | 8時間 | 同じ種類の不備が繰り返されている |
上長の承認待ち | 待ちが平均2日 | 金額に関わらず全件が同じ承認経路を通る |
会計システムへの入力 | 10時間 | 転記した内容を別の画面で再入力している |
数字は説明用の仮のものです。大切なのは、時間が大きい作業と、待ちが長い工程の両方を拾うことです。作業時間が少なくても、待ちが長ければ全体の所要日数を押し上げます。

改善案を考える型
改善案を考える型は、まずECRSで業務そのものを見直し、そのうえで自動化を検討する順序が基本です。やめられる作業を残したまま自動化すると、不要な作業に費用をかけることになります。
排除・結合・交換・簡素化
ECRSは、排除(Eliminate)・結合(Combine)・交換(Rearrange)・簡素化(Simplify)の4つの視点で業務を見直す考え方です。もともとは製造現場の改善で使われてきた手法で、事務作業にもそのまま当てはめられます。Asanaの解説でも、排除から順に検討するとされています(Asana「ECRS(イクルス)とは」・2026-10-08参照)。
視点 | 問い | 経費精算での例 |
|---|---|---|
排除 | この作業をやめても困らないか | 少額の経費まで全件を上長が承認している運用をやめる |
結合 | 複数の作業を1つにまとめられないか | 申請書への転記と会計システムへの入力を、1回の入力にまとめる |
交換 | 順序や担当を入れ替えられないか | 不備の確認を、提出後ではなく提出時の入力画面で行う |
簡素化 | もっと単純な方法にできないか | 申請書の記入項目を、実際に使う項目に絞る |
検討は排除から始めます。排除できればその作業にかかる時間はゼロになり、残りの3つの視点よりも効果が大きいためです。一方で、確認や承認のように、リスクを抑える役割を持つ作業を安易に外すと問題が起きます。排除の案は、その作業が何を防いでいたのかを確認してから採用します。

自動化の検討
自動化は、ECRSで業務を整理したあとに残った作業のうち、ルールが決まっていて繰り返しが多いものに対して検討します。入力の転記、定型メールの送信、帳票の作成などが典型です。
判断に迷ったときは、次の3点を確認します。
- 手順が毎回ほぼ同じで、例外が少ないか
- 月に何度も繰り返す作業か
- 自動化した後の保守を担当できる人がいるか
3つとも当てはまるものから候補にします。向いている業務の見極め方は、RPA化できる業務の特徴でも扱っています。
改善案の優先付け
改善案は、効果の大きさと取り組む負担の2軸で並べて、効果が大きく負担が小さいものから着手します。案を全部同時に進めると現場が止まるため、順番を決めることが実行の前提になります。
効果と負担の整理
効果は、時間の棚卸しで出した数字をもとに、削減できそうな時間やミスの件数で見積もります。負担は、費用、準備にかかる日数、関係者の人数、現場の慣れの変化の大きさを合わせて、大・中・小の3段階で付けます。細かい数字を求めすぎず、案の間の相対的な差が分かれば十分です。
2軸で並べると、次の4つに分かれます。
- 効果が大きく負担が小さい案は、すぐに着手する
- 効果が大きく負担も大きい案は、計画を立てて取り組む
- 効果が小さく負担も小さい案は、余裕があれば実施する
- 効果が小さく負担が大きい案は、見送る

クイックウィン
クイックウィンとは、短期間で小さな成果が見える改善のことです。優先付けの結果、すぐに着手する枠に入った案がこれに当たります。申請書の項目を絞る、定型文を共有する、といった設定変更レベルの案が典型です。
最初にクイックウィンを実施する理由は、成果を早く見せることで、現場の協力を得やすくなるからです。大きな改革は関係者の負担が大きく、途中で反発が出がちです。小さな成功を先に作っておくと、次の案を進めるときの説得材料になります。
実行と定着
改善は、小さな範囲で試してから広げ、定着したかを数字で確かめるところまでが1セットです。決めた案を全社に一斉に展開すると、想定外の問題が一気に表面化します。
小さく試す
小さく試すとは、特定の部署や担当者、1か月分の業務に範囲を絞って新しいやり方を実施することです。試行の期間と、うまくいったと判断する基準を、始める前に決めておきます。
編集部が業務改善の現場でよく見かける落とし穴は、現場の担当者が試行に参加していないことです。改善案を作る側が現場を知らないと、「実際には例外が多くて使えない」という事態になります。試行には、日々その業務をしている担当者に必ず入ってもらい、使いにくい点を集めます。
定着の確認
定着の確認は、改善から1〜3か月後に、最初に決めた指標を再び測って行います。1件あたりの作業時間やミスの件数を、改善前の数字と並べて確認します。
数字が戻っていた場合は、古いやり方が残っていたり、新しい手順が共有されていなかったりすることが多いです。手順を1枚にまとめて共有し、新しく入った人にも伝わる状態にしておくと、元に戻りにくくなります。改善の基本的な進め方は、業務効率化の基本と進め方でも解説しています。
外部支援との組み合わせ
自社だけで進めにくい場面では、専門家やツールを組み合わせます。ただし、外部に任せるのは「課題の整理」や「手法の適用」であり、何を目的にするかを決める部分は社内に残します。
専門家の活用
専門家に依頼する場面は、業務の全体像を客観的に整理したいとき、社内に改善の経験者がいないとき、複数部署にまたがる改善を進めたいときです。社内の人間では言い出しにくい指摘を、第三者の立場でしてもらえる利点もあります。
フリーランスのコンサルタントに依頼する場合は、契約が準委任の形になることが一般的です。準委任は、成果物の完成を約束する契約ではなく、業務の遂行そのものを委ねる契約です。期間は3〜6か月程度のものが多いとされています。そのため、依頼の前に「期間内にどこまでを範囲とするか」「成果を何で確認するか」を決めておくと、行き違いを避けられます。契約の違いは、業務委託・準委任・請負の違いでまとめています。個別の契約内容は案件によって異なるため、判断に迷う場合は専門家へ相談してください。
依頼先を探すときの観点は、業務改善コンサルタントのエージェント比較も参考になります。
ツール導入の判断
ツールを入れるかどうかは、ECRSで整理したあとに、なお残る作業があるかで判断します。業務を整理する前にツールを選ぶと、不要な作業まで自動化してしまうことがあります。
導入を判断するときは、解決したい課題、現場の使いやすさ、運用の担当者、費用の4つを確認します。比較の軸は業務効率化ツールの選び方に詳しくまとめています。まず無料の試用や小さな範囲での導入から始め、効果を測ってから広げると、失敗のリスクを抑えられます。
出典・参考情報
- Asana「ECRS(イクルス)とは?業務改善の4原則とメリット、進め方を解説」(2026-10-08参照):ECRSの4つの視点と、排除から順に検討するという考え方
本記事の内容は2026年10月8日時点の情報に基づきます。契約や制度に関する個別の判断は、専門家へご相談ください。
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