業務フローは、書式を先に決めてから記号を並べると、迷わず1枚に収まります。業務フローのテンプレートを探して、ひな形に自分の業務を無理やり当てはめようとして手が止まる方は少なくありません。本記事では、目的と読み手の確認、横レーン型と縦レーン型の選び分け、営業事務と情報システムの記載例、記号と文字量の整え方、作成後の確認と更新の運用までを順に説明します。記載例は本文の表と図で示しているため、読み進めるだけで自分の業務に置き換えて描けるようになります。内容は2026年10月時点のものです。
業務フローの作り方|書式の考え方と記載例で理解する作成手順
書式を決める前に
書式を決める前に、業務フローの目的と読み手を言葉にしておきます。この2点が決まれば、書式・粒度・記号の選び方がほぼ自動的に定まります。
目的の確認
業務フローの目的は、大きく「引き継ぎ・教育」「課題の洗い出し」「システム化の要件整理」の3つに分けられます。目的によって、描くべき細かさがまったく変わるためです。
目的 | 描く細かさ | 特に残したい情報 |
|---|---|---|
引き継ぎ・教育 | 作業手順に近い細かさ | 誰が、いつ、何を使って行うか |
課題の洗い出し | 部署をまたぐ受け渡しが見える粒度 | 待ち時間、差し戻し、二重入力が起きる場所 |
システム化の要件整理 | 入力と出力がわかる粒度 | 扱う帳票、データ、例外の条件 |
目的を決めないまま描き始めると、手順書にも課題整理にも使えない中途半端な図になりがちです。着手前に「この図を見て誰が何を判断するのか」を1文で書き出しておくと、途中で粒度に迷ったときの判断基準になります。
読み手の想定
読み手は、業務を日常的に行う現場の担当者か、全体を見る管理者や外部の関係者かで分けて考えます。前者には細かい手順と判断条件が必要で、後者には部署間の受け渡しが一目でわかる大づかみの流れが必要です。
業務に詳しい読み手は、省略された手順を自分で補って読めます。一方、初めて業務に触れる読み手は、省略された手順がそのまま理解の穴になります。業務フローは作成者が一番よく理解している状態で描くため、つい説明を省きがちです。読み手の前提知識を一段低く見積もっておくのが、実務での安全な置き方です。
書式の選び方
書式は、担当者ごとの役割分担を見せたいなら横レーン型、手順の順番を上から追わせたいなら縦レーン型を選びます。どちらも「誰が行うか」を帯状の領域(レーン)で分ける点は共通しています。
横レーン型
横レーン型は、担当者や部署の名前を左端に縦に並べ、処理を左から右へ進める書式です。部署をまたぐ受け渡しが横方向の矢印として見えるため、業務の全体像と責任の所在を同時に伝えられます。
向いているのは、関わる部署が3〜5つ程度で、受け渡しの回数が課題になりやすい業務です。営業事務の受注から請求までの流れのように、部署をまたぐ業務の可視化によく使われます。時間の流れが左から右へ向かうので、横長の画面や用紙に自然に収まります。一方で、処理の数が多くなると横に長く伸びるため、1枚に収めるには工程の粒度をそろえる工夫が要ります。
縦レーン型
縦レーン型は、担当者の名前を上端に横に並べ、処理を上から下へ進める書式です。文書を読む向きと同じ流れになるため、手順書やマニュアルに添える図として読みやすい書式です。
向いているのは、手順の順番そのものを正確に追わせたい業務や、縦長の資料に載せたい場合です。スクロールで読む画面や、A4縦の資料にそのまま収まります。レーンの数が増えると横幅が足りなくなるので、担当者が2〜4者程度の業務に絞るのが扱いやすい範囲です。迷ったときは、受け渡しの多さを見せたいなら横、手順の順番を見せたいなら縦と覚えておくと選びやすくなります。

記載例(営業事務)
営業事務の記載例として、申込受付から請求までの流れを横レーン型で示します。ポイントは、顧客・営業事務・経理の3レーンに分け、不備があった場合の戻りを必ず1本描くことです。
申込受付から請求まで
申込受付から請求までの流れは、次の6つの処理と1つの判断で表せます。表は、図の各処理を担当レーンと順番で整理したものです。
順番 | 担当レーン | 処理の内容 | 次に進む先 |
|---|---|---|---|
1 | 顧客 | 申込書を送付 | 2へ |
2 | 営業事務 | 申込内容を確認 | 判断へ |
判断 | 営業事務 | 記入に不備があるか | あり:3へ/なし:4へ |
3 | 顧客 | 修正を依頼され、申込書を直して再送 | 2へ戻る |
4 | 営業事務 | 受注登録 | 5へ |
5 | 経理 | 請求書を発行 | 6へ |
6 | 経理 | 入金を確認 | 終了 |
処理の文言は「名詞+動詞」の短い形にそろえると、図に載せたときに読みやすくなります。たとえば「申込内容を確認」「請求書を発行」のように、1つの四角に1つの動作だけを入れます。「確認して登録する」のように2つの動作を1つの四角に詰めると、どこで次の担当に渡るのかが曖昧になります。
分岐の書き方
分岐は、ひし形の判断記号から「はい」「いいえ」の2方向に矢印を出し、それぞれに条件を書いて表します。判断記号の中には、答えが二択になる問いかけの形で書きます。
営業事務の例では「記入に不備あり?」が判断にあたります。不備があれば顧客に戻って修正を依頼し、なければ受注登録へ進みます。分岐でよく起きる失敗は、「いいえ」側の矢印だけを描き、「はい」側の行き先を書き忘れることです。判断記号から出る矢印は必ず2本そろえ、戻る場合は戻り先の処理を明示します。差し戻しの回数に上限を設ける場合は、「3回目で担当者に電話」のように別の処理として描き足します。

記載例(情報システム)
情報システム部門の記載例として、社内からの問い合わせ対応と障害時の連絡を取り上げます。ポイントは、一次対応で解決できるかどうかの判断を軸に、担当チームへの引き継ぎ先を明確にすることです。
問い合わせ対応
問い合わせ対応は、利用者・ヘルプデスク・担当チームの3レーンで、受付から完了連絡までを描きます。表は、図の流れを処理ごとに整理したものです。
順番 | 担当レーン | 処理の内容 | 次に進む先 |
|---|---|---|---|
1 | 利用者 | 問い合わせ | 2へ |
2 | ヘルプデスク | 受付を記録 | 判断へ |
判断 | ヘルプデスク | その場で解決できるか | できる:3へ/できない:4へ |
3 | ヘルプデスク | 回答 | 6へ |
4 | 担当チーム | 調査・対応 | 5へ |
5 | ヘルプデスク | 対応結果を受け取り記録を更新 | 6へ |
6 | ヘルプデスク | 完了を連絡 | 終了 |
この例では、すべての問い合わせがヘルプデスクを経由し、最後の完了連絡もヘルプデスクが行います。利用者と担当チームが直接やり取りする形にしない点が、業務ルールとして図に表れています。図を描くことで、「担当チームが利用者へ直接返信してよいのか」といった未決定のルールが見つかることもあります。
障害時の連絡
障害時の連絡は、通常の問い合わせとは別の図に分けて描きます。緊急度が高く、通知先と判断の基準が通常時と異なるためです。
障害時のフローで押さえたいのは、次の3点です。
- 影響範囲の判断を、連絡の前に置くこと(全社か、一部の部署か)
- 連絡先を影響範囲ごとに分け、判断記号の分岐として描くこと
- 復旧後の報告まで含めて終端を決めること
平常時の問い合わせ対応と障害時の連絡を1枚に混ぜると、分岐が増えて読みにくくなります。1枚の図には1つの業務シナリオだけを載せる、という分け方が実務では扱いやすくなります。障害時の図には、連絡の手段(電話・メール・チャット)と連絡の優先順位を処理の文言に含めておくと、実際の発生時に迷いません。

書式を整えるコツ
書式を整えるコツは、記号の意味を図の中で1通りに固定することと、四角の中の文字量を絞ることの2つです。この2つがそろうだけで、図の読みやすさは大きく変わります。
記号の統一
記号は、1枚の図の中で「同じ形は同じ意味」に固定します。業務フローで一般的に使われる記号は、次の4種類と矢印で足ります。
記号の形 | 意味 | 書く内容の例 |
|---|---|---|
角丸の四角 | 開始・終了 | 「申込受付」「完了」 |
長方形 | 処理(作業) | 「請求書を発行」 |
ひし形 | 判断(分岐) | 「記入に不備あり?」 |
波形の下辺をもつ四角 | 書類・帳票 | 「申込書」「請求書」 |
矢印 | 処理の流れの向き | 左から右、上から下が基本 |
社内で使う記号の種類を増やしすぎると、凡例を見ないと読めない図になります。凡例は図の隅に小さく添え、記号は表にある4種類にとどめるのが無難です。
厳密な表記が必要な場面では、既存の標準表記を参照する方法もあります。たとえば、国際的な標準化団体であるOMG(Object Management Group)が策定した「BPMN(Business Process Model And Notation)」は、業務プロセスの設計や管理に携わる関係者が直接使えるよう、フローチャートに近い表記として作られています。全社で表記をそろえる必要があるときは、この種の標準を土台にして社内ルールを決めると、後から他部署の図と見比べやすくなります。
文字量の目安
四角の中の文字量は、1つの四角あたり全角で20字以内を目安にします。1枚の図に載せる処理の数は、10〜15個程度に収めると、印刷しても画面で見ても読み取れる範囲に収まります。
この数値は編集部が実務で図を作る際に使っている目安であり、公的な基準ではありません。業務の複雑さや図を見る環境によって調整してください。処理が15個を超えそうなときは、無理に小さくせず、図を「受付〜登録」「登録〜請求」のように2枚に分けます。分けた図の境目には、同じ名前の開始・終了記号を置くと、2枚がつながっていることが伝わります。
実務の観点から1点付け加えると、現場へのヒアリングで最初に聞き取れる流れは、問題なく進んだ場合の流れだけであることが多くなります。例外処理や差し戻しは、「そういえばこの場合は」と後から出てくるのが普通です。最初の図は主要な流れだけで描き、例外はヒアリングの二巡目で足していく進め方にすると、図が膨らみすぎず、聞き漏れも減ります。
作成後の確認
作成後は、現場の担当者を含む関係者に図を見てもらい、実際の動きとのずれを直してから確定します。図は一度描いて終わりではなく、業務の変化に合わせて更新する前提で運用します。
関係者レビュー
関係者レビューでは、現場の担当者に「実際の仕事の順番と合っているか」を確認してもらいます。レビューの相手は、図に出てくるレーンごとに最低1人ずつ選びます。
レビューで確認する点は、次のとおりです。
- 処理の順番が、実際の作業の順番と一致しているか
- 判断の条件が、現場で使っている基準と合っているか
- 例外や差し戻しの流れが、抜けていないか
- 担当レーンの割り当てが、実際の責任の所在と合っているか
外部の立場で業務フローの作成を支援する場合は、契約形態にも注意が必要です。フリーコンサル案件の約7〜8割は準委任契約とされ、成果物の完成義務を負わない形が一般的です(出典:コンサルチョイス「フリーコンサルの契約形態ガイド」、2026年10月参照)。そのため、どの範囲の業務まで図にするのか、どの時点を完成とみなすのかを、レビューの場で関係者と言葉にそろえておくと、後からの認識のずれを防げます。契約内容そのものの判断が必要な場合は、法務の専門家に確認してください。
更新の運用
更新の運用では、「誰が」「どの契機で」図を直すのかを最初に決めます。業務が変わっても図が古いままだと、引き継ぎ資料としても課題整理の材料としても使えなくなります。
最低限決めておきたいのは、次の3点です。
- 更新の担当者(業務の責任者か、図の作成者か)
- 更新の契機(組織変更、システムの入れ替え、担当者の交代など)
- 図の末尾に残す情報(作成日、更新日、版数、更新者)
更新日と版数を図の隅に書いておくだけで、古い図が使い回される事故を減らせます。業務フローは、書式を決め、記載例にならって描き、関係者と確認し、変化に合わせて直すという一連の流れで価値が保たれます。書式の考え方がつかめたら、関連する図の描き方にも応用できます。業務フロー図の書き方をコンサルタントの視点で整理した業務フロー図の書き方、問い合わせ後の対応を図にする障害対応フローの作り方、業務を標準化する進め方を扱った業務標準化の進め方、業務の流れをモデルとして描く業務プロセスモデリングの基本もあわせて参考になります。業務フローの作成力を活かして業務改善の案件に関わりたい方は、業務改善コンサルのフリーランス向けエージェントの解説も役立ちます。
出典・参考情報
- Object Management Group「Business Process Model And Notation (BPMN) 2.0」(2026-10-07参照):BPMNの目的に関する記述
- コンサルチョイス「フリーコンサルの契約形態ガイド【準委任・請負・業務委託の違いと注意点】」(2026-10-07参照):準委任契約の割合と成果物の完成義務に関する記述
本記事は2026年10月7日時点の情報に基づきます。最終更新日:2026年10月。契約や法務に関する個別の判断は、専門家にご確認ください。
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