業務フローを作る目的とは?3つの効果と作る前に確認する4事項

業務フローを作る目的とは?3つの効果と作る前に確認する4事項

業務フローを作る目的は、業務の見える化、属人化の解消、改善点の発見の3つに整理できます。どの目的で作るかによって、フローに書き込む細かさ(粒度)が変わるため、作り始める前に目的を1つ決めておくことが、手戻りを減らす最短の方法です。

本記事では、業務フローを作る目的と得られる効果を3つに分けて説明し、目的を決めずに作ったときに起きる問題、引き継ぎ・システム導入・内部統制という用途別の粒度の違い、作る前に確認する4つの事項、現場に目的を伝える方法までを順に整理します。業務フロー作成を指示された担当者の方や、現場に目的を説明する立場のコンサルタントの方が、そのまま実務に使える内容を目指しました。

業務フローを作る目的を3つに分けて理解する

業務フローとは、業務の流れを、誰が・どの順番で・何を行うかという観点で図や表にまとめたものです。作る目的は大きく、見える化・属人化の解消・改善点の発見の3つに分けられ、後ろの目的ほど前の目的の成果を土台にします。

業務フローを作る3つの目的(見える化・属人化の解消・改善点の発見)を3つのアイコンで並べた図解

目的

解決したい状態

得られる効果

主な読み手

業務の見える化

全体像を誰も説明できない

関係者が同じ流れを前提に話せる

担当者・管理職・外部の支援者

属人化の解消

担当者しか手順を知らない

休暇や異動でも業務が止まりにくくなる

後任者・チームメンバー

改善点の発見

どこを直すべきか分からない

手戻り・待ち・重複の場所を特定できる

改善の意思決定者

業務の見える化

業務の見える化とは、頭の中や口頭にしかない仕事の流れを、第三者が読める形に書き出すことです。最大の効果は、関係者が同じ前提で議論できるようになる点にあります。

たとえば、同じ「請求書の支払処理」でも、経理担当者は「承認が下りたら振込」と捉え、現場の担当者は「請求書を受け取ったら終わり」と捉えていることがあります。流れを書き出すと、この認識のずれがその場で見つかります。業務フローの作成を支援する自治体DXの実務者も、作成に取り組んで初めて自分の業務の全体像が分かったと言われる担当者がいると述べています(市川博之「今こそ、業務フロー1度作ってみよう。」note、2021年8月16日、2026-10-10参照)。

属人化の解消

属人化の解消とは、特定の担当者だけが知っている手順や判断基準を、組織の共有資産に変えることです。効果は、休暇・異動・退職が起きても業務が止まりにくくなることです。

ここで重要なのは、手順だけでなく「迷ったときの判断」まで書くことです。「金額が発注額と合わないときは経理へ確認する」のように、例外時の動きが書かれていなければ、後任者は結局その担当者に聞くことになります。属人化の解消が目的なら、通常の流れと例外の流れの両方を載せるのが基本です。

改善点の発見

改善点の発見とは、書き出した流れの中から、待ち時間・手戻り・重複作業・承認の滞留といった無駄の発生場所を見つけることです。効果は、改善の優先順位を感覚ではなく流れの上で決められることです。

業務フローがなければ、効率化の議論はツール選びから始まりがちです。現行の流れを先に描いておくと、「どの工程を変えるのか」が明確になり、改善効果の見積もりもしやすくなります。改善の進め方は、業務効率化のフレームワークの記事でも整理しています。

目的を決めずに作ると起きる問題

目的を決めずに業務フローを作ると、細かさが場面ごとにぶれ、完成しても使われない成果物になりやすくなります。典型的な症状は、全工程を同じ細かさで書こうとして終わらない、完成しても誰も読まない、改定されずに古くなる、の3つです。

作って終わりになる原因

作って終わりになる原因は、「誰がどの場面で使うか」が決まっていないまま、図を描くこと自体がゴールになってしまうことです。使う場面が決まっていなければ、読み手が欲しい情報も分からず、書く内容が際限なく増えていきます。

よくある流れを挙げます。

  • 上司から「業務フローを作っておいて」と指示され、目的の確認をしないまま着手する
  • 抜け漏れを恐れて、1つの作業まで細かく書き込み、図が数十枚に膨らむ
  • 完成時には、引き継ぎにも改善にも使いにくい細かさになっている
  • 業務が変わっても更新の担当者が決まっておらず、1年後には実態と合わなくなる

目的が決まっていれば、「この目的に必要な情報か」という基準で書く内容を絞れます。目的は、作業の終わりを決める基準にもなります。

目的別に変わる業務フローの粒度

業務フローの粒度は、引き継ぎなら作業手順、システム導入なら入出力とデータ、内部統制なら承認と証跡と、目的ごとに必要な細かさが異なります。次の表は、架空の「請求書の支払処理」を3つの目的で書き分けた例です。

請求書の支払処理を、引き継ぎ・システム導入・内部統制の3つの目的に合わせて粗さを変えて描いた比較図

目的

書く単位

「請求書の支払処理」の記載例(架空)

引き継ぎ

担当者の作業手順

請求書を受け取る → 発注書と金額を照合する → 上長へ回覧する → 支払依頼書を作成する。迷いやすい例外(金額不一致時の連絡先)を注記する

システム導入

入力・出力・分岐・データ項目

請求書受領(紙またはPDF)→ 入力項目(取引先・金額・支払期日)→ 金額が発注額と異なる場合は差し戻し → 承認後に支払データを出力する

内部統制

承認・照合などの統制ポイントと証跡

照合担当と承認者は別の担当者とする。承認の記録(承認日・承認者)を残す。支払データの変更は権限者のみ可能とする

引き継ぎのためのフロー

引き継ぎ用のフローは、後任者が1人で業務を回せることを基準に、作業手順の単位で書きます。システムの画面名やデータ項目までは求められず、代わりに「迷う場面」の記載が重要になります。

前任者へのヒアリングで、通常の流れと、年に数回しか起きない例外を分けて聞くと、書き漏らしを減らせます。記号の選び方や書式の考え方は、業務フローの作り方|書式の考え方と記載例で具体例とともに説明しています。

システム導入のためのフロー

システム導入用のフローは、ベンダーが要件を読み取れるよう、入力・出力・分岐・扱うデータの単位まで書きます。要件定義の資料として使われるため、システム化の対象になる業務に絞り、その範囲は漏れなく書くのが基本です。

システム開発の実務でも、まず必須の業務から着手し、システムに関わる業務だけは漏れなく把握することが重要とされます(アドバンスド・ソリューション「システム開発用の業務フロー図を書く前に押さえるべき4つのポイント」2023年6月27日、2026-10-10参照)。システム化しない業務まで同じ細かさで書くと、時間だけが消費されます。作図の具体的な手順は、業務フロー図の書き方【コンサルタント向け】完全ガイドを参照してください。

内部統制のためのフロー

内部統制用のフローは、取引の開始・承認・記録・処理・報告という流れの中で、誰が何を承認し、どこに証跡が残るかが分かる粒度で書きます。内部統制報告制度(いわゆるJ-SOX)の対象は上場会社です。これは、金融商品取引法により、上場会社に財務報告に係る内部統制の経営者による評価と公認会計士等による監査が義務づけられた制度で、2008年4月1日以後に開始する事業年度から適用されています(金融庁・企業会計審議会「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の設定について(意見書)」2007年2月15日、2026-10-12参照。同意見書は公表後に改訂されているため、現行の基準は金融庁の最新の公表資料で確認が必要です)。

同じ実施基準では、評価対象の業務プロセスについて、取引の開始、承認、記録、処理、報告を含む流れを把握し、その概要を必要に応じて図や表で整理・記録することが有用とされています。参考例として「業務の流れ図」「業務記述書」「リスクと統制の対応」の3種類が挙げられています。ただし、これらは必要に応じて作る参考例で、企業が別に作成している資料があればそれを利用して補足すればよく、この様式に従う必要はないとも書かれています。

つまり、内部統制向けのフローでは、前掲の表の例のように「照合担当と承認者を分ける」「承認の記録を残す」といった統制の置き場所が読み取れることが肝心です。作業手順の細かさよりも、承認と証跡の位置が正しく描かれているかが問われます。実際の評価範囲や文書化の方法は企業ごとに異なるため、個別の対応は監査法人や内部統制の専門家に確認してください。

作る前に確認する4つの事項

業務フローを作る前には、目的、読み手、範囲、情報源の4つを確認しておくと、作成中の手戻りが大きく減ります。この4つは、依頼者や関係者と15分ほど話せば確認できる内容です。

業務フローを作る前に確認する4つの事項(目的・読み手・範囲・情報源)を並べたチェックリスト図
  1. 目的:見える化・属人化の解消・改善点の発見のどれが主目的かを1つ決めます。入力は依頼者の発言、出力は「引き継ぎのために作る」のような一文の目的です。
  2. 読み手:完成したフローを誰がどの場面で読むかを確認します。入力は利用場面のヒアリング、出力は「後任者が初日に読む」「ベンダーが要件定義で読む」のような読み手の特定です。
  3. 範囲:どの業務の、どこからどこまでを描くかを決めます。入力は業務の起点と終点の候補、出力は「請求書の受領から支払データの出力まで」のような範囲の定義です。
  4. 情報源:誰から話を聞き、どの資料を見るかを決めます。入力は現場担当者の候補と既存の手順書・設計書、出力はヒアリング先の一覧と日程です。

4つのうち迷いやすいのは範囲です。最初から全社の業務を描こうとせず、目的に直結する業務から着手し、必要になった範囲を後から足す進め方が現実的です。

業務フローの目的を現場に伝える方法

現場に目的を伝えるときは、「評価のためではなく、業務を楽にするため」と伝わるように、目的・使い道・負担の3点を最初に1枚で示すのが効果的です。現場にとって業務フローの作成は追加の作業であり、目的が見えないと協力を得にくくなります。

伝える手順の一例を示します。

  1. 目的を一文で書く(例:「担当が休んでも支払処理が止まらないように、手順を共有する」)
  2. 完成したフローを誰がどう使うかを具体的に示す(例:「後任者が最初の1週間で見る」)
  3. 現場にお願いする作業量を先に伝える(例:「ヒアリング1回45分、確認2回」)
  4. 人の評価や人員削減に使わないことを、必要に応じて明言する
  5. 初版を一緒に確認し、現場の言葉に直してもらう

現場が感じる不安は、「作った結果、仕事を減らされるのではないか」という点に集約されることが多くあります。この不安に先に答えておくと、ヒアリングで実態に近い情報が出てきやすくなります。

まとめ|目的から逆算して作り始める

業務フローを作る目的は、見える化・属人化の解消・改善点の発見の3つで、目的によって引き継ぎ・システム導入・内部統制といった用途と粒度が決まります。作り始める前に、目的・読み手・範囲・情報源の4つを確認し、現場には目的と使い道を先に伝えることが、使われるフローを作る近道です。

業務フローの整理は、BPRやシステム導入支援の案件でコンサルタントに求められる基本スキルでもあります。進め方の全体像はBPRコンサルティングとは、システム導入支援の仕事の中身はSaaS導入支援のフリーランス案件で整理しています。なお、大手企業や上場企業は与信や購買規定、機密保持の都合から個人と直接契約しないケースが多く、法人であるエージェントを挟む3者間契約が実務上の基本とされています。独立を考える場合の探し方は、プロジェクトマネージャー向けフリーランスエージェント比較も参考になります。

出典・参考情報

  1. 金融庁・企業会計審議会「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の設定について(意見書)」(2007年2月15日公表、2026-10-12参照)
  2. アドバンスド・ソリューション「システム開発用の業務フロー図を書く前に押さえるべき4つのポイント」(2023年6月27日公開、2026-10-10参照)
  3. 市川博之「今こそ、業務フロー1度作ってみよう。」note(2021年8月16日公開、2026-10-10参照)

最終更新日:2026年10月12日。制度に関する記載は個別の判断が必要な場合があるため、実際の対応は専門家にご確認ください。

Powered by Proconnect
PMO・DX・SAP系コンサルタント案件を無料で探してみる

スキルシートを登録するだけ。専任エージェントが最適な案件を無料でご提案します。

無料でコンサルタント案件を探す
コンサルタントの歩み 編集部

Work-Xが運営するフリーランスコンサルタント向け情報メディア。PMO・BPR・DX・SAP領域の実務情報を発信しています。 運営者情報はこちら。