業務フローの分岐は、判断記号(ひし形)に「はい」「いいえ」などの条件を書き、結果ごとに矢印を分けて描き、最後に流れを1本へ合流させます。この4つを守るだけで、条件によって処理が変わる業務も読み違えのない図になります。
業務フローの分岐の書き方|判断記号の使い方と作図の4ステップ
この記事では、分岐が必要になる場面、判断記号と合流の基本の書き方、よく使う分岐のパターン5つ、作図の手順STEP1〜STEP4、分岐が増えたときの分け方を、経費精算という架空の題材で説明します(2026年10月時点の情報です)。
業務フローで分岐を表す目的
業務フローで分岐を表す目的は、条件によって処理が変わる業務を、読む人が迷わずに追えるようにすることです。
業務は「いつも同じ順番で進む」ものばかりではありません。書類に不備があれば差し戻し、金額が大きければ承認者が増えるなど、途中で流れが分かれます。この分かれ目を図に描かないと、担当者ごとに頭の中の流れが食い違い、引き継ぎやシステム化の場面で手戻りが起きます。
分岐が必要になる場面
分岐が必要になるのは、同じ入り口から入った案件が、条件によって別の処理へ進む場面です。
代表的な場面は次の4つです。
- 書類や入力内容に不備があるかどうかで、受付と差し戻しに分かれる場面
- 金額や件数の大きさで、承認者や手続きが変わる場面
- 承認されるか却下されるかで、後続の処理が変わる場面
- 通常とは違う事情(領収書の紛失など)が起きたときに、例外の手続きへ進む場面
こうした場面を洗い出さずに作った流れ図は、順調に進むケースだけが描かれた「理想の流れ」になりがちです。現場の実態に近いフロー図にするには、分岐の位置を最初に特定しておくことが欠かせません。
分岐が多すぎると読みにくくなる理由
分岐が多すぎると読みにくくなるのは、矢印が交差し、読む人が「いま自分がどの条件を満たした流れにいるのか」を見失うからです。
判断点が増えるほど、描く線の数は掛け算のように増えます。1枚の図に判断点が10個あれば、道筋の組み合わせは何十通りにもなります。読み手は条件を頭の中に積み上げながら追うことになり、途中で「この矢印はどの条件の結果だったか」が分からなくなります。作る側にとっても、1つの条件を変えるたびに多くの線を引き直す必要があり、更新の負担が重くなります。
分岐は業務の実態を映すために必要ですが、量が増えたら図を分けるのが基本です。分け方は、記事の後半で扱います。
分岐を表す基本の書き方
分岐の基本の書き方は、判断記号に条件を1つ書き、出口の矢印に結果のラベルを付け、後半で流れを合流させることです。
ここでは、経費精算の申請を受け付ける場面を例にします。申請を受け付けたあと、領収書が添付されているかを判断し、添付があれば内容の確認へ、なければ申請者へ差し戻します。どちらの流れも最後は「承認の可否を判断する」工程に集まります。

判断の記号と条件の書き方
判断の記号は、ひし形で描き、その中に答えが分かれる条件を書きます。
ひし形は、結果によって次の工程が決まる点を表す図形で、結果は「はい」と「いいえ」の2つになることが多いとされています(Wikipedia「フローチャート」、Microsoftサポート「Visioで基本的なフローチャートを作成する」の図形の説明より)。日本産業規格のJIS X 0121にも、情報処理用の流れ図の記号が定められています。社内で独自の記号を作るよりも、広く知られた形に揃えるほうが、読む人に説明する手間が減ります。
条件の書き方には、押さえたい点が3つあります。
- 条件は「領収書は添付されているか」のように、はい・いいえで答えられる疑問の形で書く
- 1つのひし形に書く条件は1つだけにする(「領収書があり、かつ金額が1万円未満か」のように2つを混ぜない)
- 出口の矢印には、必ず「はい」「いいえ」など結果のラベルを付ける
2つの条件を1つのひし形に混ぜると、どちらの条件の結果を指しているのかが曖昧になります。条件が2つあるなら、ひし形を2つに分けて順番に描きます。
合流のさせ方
合流とは、分かれた流れが同じ後続の工程に集まることで、複数の矢印を次の工程の入り口へ向けて描きます。
差し戻しの流れも、内容確認の流れも、最終的には「承認の可否を判断する」へ進む場合は、2本の矢印を同じ工程の上辺へつなぎます。JISでは、流れ線の途中に矢印が接する形で合流を表すと標準化されています(Wikipedia「フローチャート」の「合流」の説明より)。矢印をひとまとめにしてから次の工程へ入れるやり方でも、読み違えは起きません。
合流で気をつけたいのは、合流先が本当に同じ工程かどうかです。見た目をすっきりさせたくて、実際には別の処理である2つの流れを1か所に集めると、業務の実態とずれた図になります。合流させてよいのは「ここから先は、どちらの流れから来ても同じ処理をする」という地点だけです。
分岐のパターン5つ
業務フローの分岐は、二択、多岐、承認の可否、例外処理、ループの5つのパターンに分けて考えると、どの業務も整理しやすくなります。
いずれのパターンも、描き方の違いは「出口の矢印がどこへ向かうか」です。以降の例は、すべて経費精算を題材にした架空の作図例の骨子です。

二択の分岐
二択の分岐は、条件を満たすか満たさないかで流れを2本に分ける、最も基本の形です。
作図例の骨子は次のとおりです。
- 判断記号:領収書は添付されているか
- 「はい」:内容を確認する工程へ進む
- 「いいえ」:申請者に差し戻す工程へ進む
出口は必ず2本にします。「はい」しか描かれていない図は、「いいえ」の場合に何が起きるのかが読み取れず、業務の抜け漏れの原因になります。
多岐に分かれる分岐
多岐に分かれる分岐は、1つの条件の答えが3つ以上ある場合に、出口の矢印を3本以上に増やす形です。
経費精算で、金額によって承認者が変わる場合を例にします。
金額の区分(架空の例) | 矢印のラベル | 進む先 |
|---|---|---|
1万円未満 | 1万円未満 | 課長が承認する |
1万円以上10万円未満 | 1万円以上10万円未満 | 部長が承認する |
10万円以上 | 10万円以上 | 役員が承認する |
多岐の分岐は、区分に重複や抜けがないかの確認が欠かせません。「1万円以下」と「1万円以上」のように境界の金額が両方に入ると、ちょうど1万円の案件の行き先が決まりません。区分の境目は、未満・以上のどちらに含めるかをそろえて書きます。
承認の可否による分岐
承認の可否による分岐は、承認者の判断結果によって、先へ進むか前の工程へ戻るかが決まる形です。
作図例の骨子は次のとおりです。
- 判断記号:承認者が申請内容を承認するか
- 「承認」:経理が支払いを処理する工程へ進む
- 「却下」:申請者へ理由を通知し、申請の取り下げで終了する
- 「差し戻し」:申請者が内容を修正する工程へ戻る
承認の分岐では、却下や差し戻しの先を描き忘れる例がよく見られます。「承認された場合」だけを描くと、承認されなかった申請がその後どう扱われるのかが図から分からなくなります。承認者が増える業務ほど、却下と差し戻しの行き先を最初に決めておくと整理しやすくなります。
例外処理への分岐
例外処理への分岐は、通常の流れから外れる事情が起きたときに、別の手続きへ進める形です。
経費精算で領収書をなくした場合を例にします。
- 判断記号:領収書は手元にあるか
- 「はい」:通常の流れ(内容を確認する)へ進む
- 「いいえ」:紛失の理由を書いた書類を作成し、上長が確認する例外の手続きへ進む
- 例外の手続きが終わったあと:通常の流れの「内容を確認する」へ合流する
例外の流れは、本流の横に短く描くと、通常の流れと見分けがつきます。例外のたびに別の図を作ると数が膨れるため、発生頻度の高い例外だけを本流の図に描き、まれな例外は注記や別図に回す、といった線引きが現実的です。
ループして戻る分岐
ループして戻る分岐は、条件を満たすまで同じ工程を繰り返す形で、矢印が前の工程へ戻ります。
作図例の骨子は次のとおりです。
- 判断記号:申請内容に不備がないか
- 「いいえ」:申請者が内容を修正し、再び「内容を確認する」へ戻る
- 「はい」:次の工程へ進む
ループを描くときは、永遠に繰り返される図にならないよう、終わりの条件を決めておきます。たとえば「差し戻しは2回まで。3回目になる場合は上長が申請者と相談する」のように、繰り返しの上限と、上限を超えたときの出口を描いておくと、実際の運用に即した図になります。
作図の手順 STEP1〜STEP4
分岐を含む業務フローは、判断点の洗い出し、条件の明確化、分岐の先の作図、読みやすい整理の4ステップで描くと、描き漏れが減ります。
各ステップの入力と出力は次のとおりです。
- STEP1 判断点を洗い出す:入力は業務の担当者へのヒアリングと現行の手順書、出力は判断点の一覧
- STEP2 条件を明確にする:入力は判断点の一覧、出力は条件と結果の一覧
- STEP3 分岐の先を描く:入力は条件と結果の一覧、出力は流れ図の下書き
- STEP4 読みやすく整理する:入力は流れ図の下書き、出力は完成した流れ図

STEP1 判断点を洗い出す
STEP1では、業務の途中で「流れが分かれる地点」をすべて書き出し、判断点の一覧を作ります。
- 担当者に、通常の流れを最初から最後まで話してもらう
- 「それがうまくいかないとき、どうしますか」「いつもと違う場合はありますか」と聞き、流れが変わる地点に印を付ける
- 印を付けた地点を、「領収書の有無」「金額の区分」「承認の可否」のように一覧にまとめる
この段階では、まだ図を描きません。経費精算なら、判断点は「領収書の有無」「金額の区分」「承認の可否」の3つ程度に収まります。聞き取りが浅いと、担当者が当たり前と思っている例外が抜けるため、複数の担当者から聞けると精度が上がります。
STEP2 条件を明確にする
STEP2では、判断点ごとに「何を見て、どう判断するか」を、誰が読んでも同じ答えになる言葉で書きます。
- 判断点を、はい・いいえで答えられる疑問の形に書き直す(例:「領収書は添付されているか」)
- 結果ごとの出口を書き出す(例:はい、いいえ)
- 金額や日数などの基準があれば、数値と境界の扱い(未満か以上か)を決める
出力は、判断点ごとの条件と結果の一覧です。「高額の場合」「急ぎの場合」のような曖昧な言葉が残っていないかを、このステップで確認します。基準が決まっていない条件は、図に描く前に、業務の責任者に基準を確認する必要があります。
STEP3 分岐の先を描く
STEP3では、条件と結果の一覧をもとに、各出口の先に続く工程を描き、流れ図の下書きを作ります。
- 通常の流れ(主な経路)を、上から下、または左から右へ1本の線として先に描く
- 判断点の位置にひし形を置き、出口の矢印にラベルを付けて、各出口の先の工程を描く
- 分かれた流れが同じ工程に集まる地点を探し、合流させる
先に主な経路だけを描くと、全体の骨格が見えるため、例外の流れを足しても図が崩れにくくなります。出口の先が行き止まりになっていないか(終了記号まで届いているか)を、描きながら確認します。
STEP4 読みやすく整理する
STEP4では、矢印の交差や配置を整え、初めて見る人が迷わず追える流れ図に仕上げます。
- 矢印が交差している箇所を探し、工程の並びを入れ替えて交差を減らす
- 流れの向きを揃える(上から下、左から右のどちらかに統一する)
- 判断記号のラベルと条件の文言を見直し、表記ゆれを直す
- 業務に関わっていない人に読んでもらい、迷った箇所を直す
出力は、完成した流れ図です。最後に第三者に読んでもらう手順は省きがちですが、作り手には分かっているつもりでも、読み手には伝わっていない箇所が見つかる大切な確認です。
分岐が複雑なときの分け方
分岐が複雑になったときは、1枚の図に収める判断点の数を決め、超えたら図を分けるのが基本です。
実務での目安として、1枚の流れ図に描く判断点は5〜7個程度までにとどめると、読み手が条件を追いきれる範囲に収まりやすくなります。これは決まった規則ではなく、編集部が整理した作図上の目安です。業務の性質や読み手の経験によって、適切な数は変わります。
図を分けるときは、次の3つのどれかを基準にします。
- 工程のまとまりで分ける(申請、承認、支払いのように、業務の大きな段階ごとに図を分ける)
- 通常の流れと例外の流れで分ける(本流の図は簡潔に保ち、例外の手続きを別の図にまとめる)
- 担当者や部門で分ける(部門ごとに図を持ち、部門間の受け渡しだけを全体の図に描く)
分けた図同士は、「詳細は別図(例外処理)へ」のような注記と、図の名前でつなぎます。流れの入り口と出口の記号をそろえておくと、図をまたいでも追いやすくなります。分けたあとは、全体を俯瞰できる粗い図を1枚残しておくと、読み手が現在地を見失いません。
業務フロー図の全体の書き方は、業務フロー図の書き方(コンサルタント向け)にまとめています。書式の考え方と記載例は、業務フローの作り方で扱っています。
まとめ|分岐をシンプルに保つコツ
分岐をシンプルに保つコツは、条件を1つに絞り、出口を全部描き、1枚の判断点を増やしすぎないことです。
- ひし形には、はい・いいえで答えられる条件を1つだけ書く
- 出口の矢印には結果のラベルを付け、行き止まりを作らない
- 合流は、本当に同じ処理に進む地点だけで行う
- 描く順番は、判断点の洗い出し、条件の明確化、分岐の先の作図、整理の4ステップ
- 判断点が増えたら、工程・例外・担当者のどれかで図を分ける
営業の業務を題材にした具体例は、営業業務フローの作り方で確認できます。業務フローを作る目的から整理し直したい場合は、業務フローを作る目的が参考になります。
業務フロー図の作成は、BPRや業務改善の案件で依頼されやすい作業の1つです。案件の探し方の基本として、独立初期はエージェント2〜3社を併用して選択肢と相場感を得る進め方が定石とされています。BPR案件の進め方はBPRコンサルティングの解説、エージェントの選び方はプロジェクトマネージャー向けエージェント比較も参照してください。
出典・参考情報(最終更新日:2026年10月12日)
- Wikipedia「フローチャート」(判断のひし形、JIS X 0121、合流の標準化について。2026-10-12参照)
- Microsoftサポート「Visioで基本的なフローチャートを作成する」(判断図形の説明。2026-10-12参照)
作図例は架空の題材で、判断点の数の目安は編集部の整理です。実際の業務の流れは組織ごとに異なるため、社内の規程や担当者の確認を優先してください。
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