ドコモのシステム障害は、2021年10月の全国規模の通信障害と、2022年12月に西日本地域で相次いだ2件の障害が、総務省の「重大な事故」区分に該当する代表的な事例です。本記事ではこれらの発生経緯・原因区分・総務省の対応を公表情報から整理したうえで、コンサルタントの歩み編集部が独立系コンサルタント複数名に取材した知見をもとに、クライアント企業へのリスク説明やBCP提案にどう転用できるかを解説します。
ドコモのシステム障害はなぜ起きたのか、独立コンサルタントが押さえておきたい教訓
ドコモの主要システム障害はいつ・何が起きたのか(発生時系列と規模)
ドコモのシステム障害で総務省の重大事故に認定された代表例は、2021年10月と2022年12月の合計3件です。発生日・影響範囲・原因区分は総務省への報告書や公式発表で確認できます。

発生日時と影響範囲の整理
2021年10月14日の障害は延べ約1,290万人に影響し、復旧までに約29時間を要した点が突出しています。同年以降に発生した主要な障害を整理すると、規模・原因はそれぞれ異なります。
発生日 | 主な原因区分 | 影響を受けたサービス・規模 | 復旧までの時間 |
|---|---|---|---|
2021年10月14日 | 設備工事に伴うネットワーク輻輳 | 音声通話 約460万人・データ通信 830万人以上(延べ約1,290万人) | 約29時間(4G/5Gは約12時間) |
2022年12月17日 | 設備異常 | データ通信 最大約242万人 | 4時間54分 |
2022年12月20日 | 人為的ミス | データ通信 最大約69万人 | 2時間2分 |
3件はいずれも総務省が定める「重大な事故」の基準に該当し、総務大臣への報告対象となっています(出典:総務省IPネットワーク設備委員会「電気通信事故報告制度の概要」令和5年5月時点の公開資料)。
障害発生時の一次報道と公式発表の内容
2021年10月の障害では、復旧途中の状況を「回復」と発表した結果、利用者の混乱を招いたことが後に問題視されました。
総務省は2021年11月26日、この障害を電気通信事業法上の「重大な事故」と認定して行政指導を行いました。行政指導の背景には、復旧が完了していない段階でドコモが「回復」と発表し、利用者の混乱を広げたという情報発信面の課題があったとされています(出典:日本経済新聞、2021年11月)。2022年12月の2件についても2023年2月13日付で行政指導が行われており、ドコモは現在も自社サイトの「重要なお知らせ(通信障害等)」ページで個別障害の発生・復旧状況を随時更新する運用を続けています。
障害の技術的な原因は何だったのか(公表情報からの整理)
ドコモのシステム障害の原因は、ネットワーク輻輳(回線が処理能力を超えて混み合い、通信がつながりにくくなる状態)・設備異常・人為的ミスの3類型に大別できます。
ネットワーク輻輳・設備故障などの類型
2021年10月の障害は、IoT機器の切り戻し作業に伴う位置登録信号の集中でネットワークが輻輳したことが原因でした。
IoT回線管理プラットフォームの保守工事後、約20万台のIoT端末(タクシーの決済端末などを含む)が一斉に位置登録信号を送信し、音声通話やデータ通信を処理する交換設備が輻輳状態に陥りました(出典:piyolog、2021年10月)。2022年12月17日の障害はネットワーク機器そのものの異常が原因とされ、予備機器への自動切り替えが機能しなかった点が課題とされました。同月20日の障害はサーバー増設工事の手順に誤りがあり、一部設定が意図せず消去された人為的ミスが原因です。技術的な故障と人為的な手順ミスは別の原因区分として扱われますが、いずれも予備系統・切り戻し手順の検証が不足していたという共通点を持ちます。
総務省への報告書に見る原因区分
総務省への重大事故報告書には発生原因・原因設備・再発防止策を記載する欄があり、原因は設備要因と人為要因に区分されます。
重大な事故報告書の様式は「事故の原因となった電気通信設備の概要」「発生原因」「再発防止策」などの項目で構成されており、事業者はこれらを整理したうえで総務省に提出します。総務省が公表する事故一覧でも、2022年12月17日の障害は「設備異常」、同月20日の障害は「人為的ミス」とそれぞれ区分されており、原因の切り分けが対策の方向性を左右することが分かります(出典:総務省IPネットワーク設備委員会資料、令和5年5月)。
総務省が求める大規模通信障害対応のガイドラインとは
総務省は電気通信事業法28条に基づき、一定の影響利用者数・継続時間を超える障害を「重大な事故」として報告を義務付けています。

報告義務と再発防止策のフレームワーク
報告義務の基準はサービスの種類ごとに異なり、緊急通報を扱う音声サービスでは「1時間以上かつ3万人以上」の影響で報告対象になります。
インターネット関連の無料サービスでは「12時間以上かつ100万人以上」または「24時間以上かつ10万人以上」が基準となるなど、サービスの社会的な重要度に応じて基準が細かく設定されています(出典:総務省IPネットワーク設備委員会「電気通信事故報告制度の概要」令和5年5月25日)。重大な事故に該当すると判断された場合、事業者は総務大臣へ速やかに第一報を行い、30日以内に発生原因・再発防止策などを含む詳細な報告書を提出する義務を負います。この枠組みは、インシデントを影響度で分類してから対応の優先度を決めるという考え方の点で、ITサービスマネジメントの標準的な枠組みであるITILとは何かを解説した記事で扱われるインシデント管理の発想と重なる部分があります。
通信事業者に共通する社会的責任の考え方
総務省への重大事故報告件数は近年増加傾向にあり、通信インフラの安定運用が社会的責任として重みを増しています。
総務省の集計では、重大な事故の件数は令和2年度以降増加傾向が続いており、通信技術・設備の高度化やクラウド化が一因とみられています(出典:総務省IPネットワーク設備委員会資料、令和5年5月)。2021年10月の障害では、総務省がドコモに対しソフトウェアの不具合対策・障害発生時の影響最小化・設備切替工事の事前評価・利用者への適切な周知・他の携帯電話事業者との情報共有という5点の改善を求めました。2022年12月分についても、予備機器への確実な切り替え、復旧措置の迅速化・自動化、手順管理の厳格化が求められており、いずれも個別の担当者の注意力に頼るのではなく、仕組みとしての再発防止を重視する内容になっている点が共通しています。
システム障害がユーザー・企業に与える二次的な影響
ドコモのシステム障害は通信サービスの停止にとどまらず、決済端末や法人向け業務にも影響が波及した点が特徴です。
決済・法人向けサービスへの波及
2021年10月の障害では、タクシーの決済端末など法人向けのIoT機器がネットワーク輻輳の一因にもなりました。
位置登録信号を送信していたIoT端末は約20万台にのぼり、その中にはタクシーの決済端末など法人向けの通信機器も含まれていたと報じられています(出典:piyolog、2021年10月)。通信という基盤インフラの障害は、個人の音声通話やデータ通信が使えなくなるだけでなく、キャッシュレス決済や店舗の業務システムのように通信回線に依存する法人サービス側にも連鎖して影響が及ぶ場合があることを示す事例といえます。
BCP(事業継続計画)観点からの示唆
内閣府の事業継続ガイドラインは、災害に限らず様々な危機的事象が事業活動の停止につながることを想定するよう求めています。
通信インフラの停止も、特定のキャリアや回線への依存度が高い企業にとっては事業継続計画で想定すべきリスクの一つと考えられます(出典:内閣府「事業継続ガイドライン」平成25年8月改定)。複数の通信手段や回線を確保しているつもりでも、実際に非常時に機能するかどうかは現場の理解度に左右される面があり、ITリテラシーが低い組織の課題を解説した記事で触れているような、非常時のマニュアル運用が形骸化するリスクにも通じます。
独立コンサルタントがこの事例から学ぶべきリスクマネジメントの視点
大規模システム障害の公表事例は、独立コンサルタントにとってクライアントへのリスク説明力を高める実務教材になります。

クライアント企業への説明・提案に使える論点整理
総務省の公式な原因区分を引用しながら説明すると、感覚的な危機感の訴求よりも説得力のあるリスク提案につながると考えられます。
コンサルタントの歩み編集部が独立系コンサルタント複数名に取材したところ、大規模障害のニュースは「自社にも起こりうるリスクの実例」としてクライアント企業へのBCP提案や説明資料に組み込む素材として活用されているという声が複数聞かれました。具体的には、発生時系列・影響範囲・原因区分・総務省の指導内容を1枚の資料に整理し、自社システムに当てはめた場合の想定影響を議論するワークショップの材料にする使い方です。独立を検討する段階からこうした情報整理の型を持っておくと、案件獲得後の提案の幅が広がります。独立準備を体系的に進めたい場合は、独立準備の全体チェックリストも併せて確認しておくとよいでしょう。
障害対応プロジェクトで求められるPMOスキル
障害対応プロジェクトでは、技術的な知識以上に関係者調整と報告の型を回すPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)スキルが求められます。
総務省の重大事故報告書が「発生状況」「措置模様」「再発防止策」といった項目で構成されているように、障害対応の現場でも状況整理・関係者への報告・再発防止策の言語化を並行して進める調整役が必要とされます。システム開発のどの工程で確認が抜けやすいかを把握しておくと、障害発生時の原因究明や説明がしやすくなり、システム開発の流れを工程別に整理する記事で扱う工程知識が土台になります。障害対応プロジェクトへの参画経験は、独立後の案件提案でも説明しやすい実務経験の一つになり、独立コンサルタントの案件の探し方を検討する際の切り口にもなります。なお、こうした専門性の高い障害対応・PMO案件は、独立直後にクライアントへ直接営業するより、複数のエージェントに登録して紹介を受ける経路の方が現実的だとされています。
過去の主要システム障害事例との比較で見える傾向
システム障害の傾向は通信・金融・株式売買システムで異なり、いずれも予備系統の実効性が復旧時間を左右しています。
通信・金融・行政システムの障害傾向の違い
通信は輻輳、金融は作業手順、証券取引システムはフェールオーバー設定の不備という異なるパターンで障害が発生しています。
分野 | 事例 | 原因 | 影響規模・復旧時間 |
|---|---|---|---|
通信 | ドコモ 2021年10月 | IoT機器工事に伴うネットワーク輻輳 | 延べ約1,290万人・約29時間 |
金融(為替・振込) | 全銀ネット 2023年10月 | OS変更作業に伴うインデックステーブル破損 | 延べ約566万件・約2日間 |
証券取引 | 東京証券取引所 2020年10月 | 共有ディスク装置の故障とフェールオーバー設定の不備 | 終日売買停止(当日復旧できず) |
通信は不特定多数の利用者への影響が急速に広がる一方、金融・証券は特定の取引処理が止まる形で影響が顕在化する違いがあります。いずれの事例も、平常時には想定しきれていなかった予備系統や設定の不備が、障害発生時に初めて表面化した点で共通しています(出典:piyolog、2020年10月・2023年10月)。
再発防止策に共通するパターン
再発防止策に共通するパターンは、手順書の実効性検証と予備系統の切り替え訓練を平常時から繰り返すことです。
東京証券取引所の事例では自動切り替えの設定がマニュアル上の記載と食い違っていたこと、全銀ネットの事例では手順書が最新のシステム構成に追随できていなかったことが、それぞれ障害の拡大につながったとされています。ドコモの2022年12月の2件の障害でも、予備機器への切り替えや工事手順の管理体制が再発防止策の中心に据えられています。分野を問わず、書類としての手順書を整備するだけでなく、実際に機能するかを定期的に検証する仕組みが再発防止の核心だといえます。独立コンサルタントにとって、こうした業界横断の傾向を整理した比較軸は、特定のクライアント企業に閉じない汎用的なリスク説明の材料になり、BCP提案の差別化にもつながります。
出典・参考情報
- piyolog「NTTドコモで発生した全国規模の通信障害についてまとめてみた」(2026-09-08参照)
- 財界オンライン「【総務省】大規模通信障害でNTTドコモに行政指導」(2026-09-08参照)
- 日本経済新聞「ドコモを行政指導 総務省、10月の大規模通信障害で」(2026-09-08参照)
- 日本経済新聞「ドコモ通信障害で行政指導、総務省 311万人に影響」(2026-09-08参照)
- ITmedia Mobile「総務省がドコモに行政指導 2022年12月のspモードの障害について再発防止などを求める」(2026-09-08参照)
- 総務省 IPネットワーク設備委員会「電気通信事故報告制度の概要」(資料76-1・令和5年5月25日)(2026-09-08参照)
- 内閣府(防災担当)「事業継続ガイドライン-あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応-」(平成25年8月改定)(2026-09-08参照)
- piyolog「2020年10月に発生した東京証券取引所のシステム障害についてまとめてみた」(2026-09-08参照)
- piyolog「全国銀行データ通信システムのシステム障害についてまとめてみた」(2026-09-08参照)
本記事は2026年9月時点の情報に基づいています。
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