BCP策定支援のコンサル案件|中堅企業で増える依頼の中身

BCP策定支援のコンサル案件|中堅企業で増える依頼の中身

BCP策定支援の案件とは、災害やサイバー被害で事業が止まったときに、何を優先して、どれだけの時間で戻すかを決め、計画と訓練の形に落とし込む仕事です。中堅企業では、取引先からの要請や過去の被害をきっかけに、専任の担当者がいないまま計画づくりを外部に任せる依頼が出ています。本記事では、案件で実際に行う作業、依頼のきっかけ、必要な知識の範囲、案件の探し方、形だけの計画に終わらせない進め方までを、フリーランスコンサルの実務目線で整理します。

BCP策定支援の案件内容

BCP策定支援の案件は、事業影響度分析、復旧目標の設定、訓練の設計の3つが中心で、計画書を作るだけで終わる仕事ではありません。

BCPは事業継続計画のことで、内閣府の「事業継続ガイドライン」(令和5年3月)では、計画の策定に加えて、教育・訓練、点検、継続的な改善までを含む平常時のマネジメント活動を事業継続マネジメント(BCM)と呼んでいます。支援する側に求められるのも、文書の作成だけでなく、この一連の流れを依頼企業の中で回せる状態にすることです。

事業影響度分析

事業影響度分析(BIA)とは、事業が止まったときの影響を整理し、優先して続ける業務と、必要な経営資源を特定する作業です。

内閣府のガイドラインは、停止の原因によらず、各事業が止まった場合の影響の大きさを時系列で評価するよう求めています。評価の観点として、売上や資金繰りへの影響、顧客への影響、法令や契約への違反の影響、社会的な信用への影響などが例示されています。支援の現場では、これらを事業部ごとのヒアリングで集め、1枚の表にまとめる作業が中心になります。

表の形は次のようになります。数値は説明用の架空の例で、部品を製造する中堅メーカーを想定しています。

業務(架空の例)

止まったときの主な影響

止められる時間の目安

優先度

主力製品の出荷

納入先の生産ライン停止、契約上の遅延賠償

3日程度

最優先

受発注システム

受注の取りこぼし、出荷指示の停止

2日程度

最優先

給与計算

支給日の遅延による従業員への影響

支給日まで

高

新製品の試作

開発日程の遅れ(顧客への直接の影響は小さい)

2週間程度

中

ガイドラインは、分析では1日当たりの売上や事務処理量を使った簡易な評価でもよく、定量化が難しいものは影響の大小による定性的な評価でもよいとしています。あわせて、分析に時間をかけ過ぎると事業環境が変わって作業が無意味になるおそれがあるとも述べています。完璧な分析より、早く一巡させて見直すことが前提の仕事です。

復旧目標の設定

復旧目標の設定とは、重要業務ごとに、いつまでに、どの水準まで戻すかを決める作業で、決めた目標は実際に達成できる対策とセットで確定させます。

ガイドラインでは、復旧までの時間を目標復旧時間(RTO)、復旧させる水準を目標復旧レベルと呼んでいます。事業影響度分析で見えた「止められる時間の限界」より早い時間を目標にし、復旧のレベルも許容限界を上回るように置きます。ただし、この段階の目標は実現性が確かめられていない「案」にとどまり、戦略や対策の実施可能性を検討したうえで、経営判断で最終決定する流れです。

支援する側が気をつけたいのは、目標を数字として置くだけで終わらせないことです。たとえば受発注システムの目標復旧時間を2日と置くなら、データのバックアップ先、代替の手順、担当者が欠けたときの代わりの人まで確認しなければ、目標は実現しません。ガイドラインも、公に示す目標は実現できるものでなければならないと述べています。

訓練の設計

訓練の設計とは、策定した計画が現場で動くかを確かめる場を、無理のない種類と頻度で組み立てる作業です。

ガイドラインには、教育・訓練の実施方法の例として、計画やマニュアルに沿って役割分担や手順を机上で確認する内容確認(ウォークスルー)、重要な動作を繰り返して身につける反復訓練(ドリル)などが挙げられています。案件では、最初から大規模な総合演習を組まず、机上の確認から始めて段階を上げていく設計にすることが一般的です。訓練の結果を計画に反映するところまでが、支援の範囲に含まれることが多くなります。

事業影響度分析で整理した表を、復旧目標と訓練の設計につなげる流れを図にまとめます。

事業影響度分析、復旧目標の設定、訓練の設計の3段階と、それぞれの成果物を並べたフロー図

BCP案件で見られる発注のきっかけ

BCP案件の発注のきっかけは、取引先からの要請と、自然災害やサイバー被害の経験の2つに大きく分かれます。

依頼企業の背景を押さえておくと、初回の面談で目的と範囲を聞き出しやすくなります。内閣府の「令和7年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」では、BCPを策定している中堅企業は約55%で、前回調査の約45%から増えています(令和8年版防災白書より)。策定中を含めると約66%で、残る企業にとっては、策定が現実の課題になっている段階です。

取引先からの要請

取引先からの要請とは、納入先や発注元から、事業継続の体制があるかを問われ、BCPの整備が取引の条件に近づく状況です。

ガイドラインは、事業継続に取り組むと、緊急時にも製品やサービスの供給が期待できることから、取引先から評価され、新たな顧客の獲得や取引拡大につながる場合があると述べています。裏を返せば、策定していない企業は、取引先から確認を受けたときに答えに困ることになります。この種の依頼は期限が比較的はっきりしており、「次の取引先アンケートまでに形にしたい」といった要望で始まることがあります。

案件の性格は、依頼企業が何を求めているかで変わります。取引先に提出できる体裁を整えたい場合と、実際に動く計画を作りたい場合では、必要な作業量が大きく異なります。面談の段階で、提出先の有無と、求められる水準を確認しておくと、後から作業範囲が膨らむことを防げます。

自然災害・サイバー被害の経験

自然災害やサイバー被害の経験とは、実際に事業が止まった、または止まりかけた出来事が、BCP策定の直接の動機になっているケースです。

被害を経験した企業は、何が困ったかを具体的に覚えているため、事業影響度分析のヒアリングが進めやすい傾向があります。一方で、直近の出来事に引きずられ、地震には備えるがシステム停止には備えていないといった偏りが出やすい点には注意が必要です。ガイドラインは、停止の原因によらず事業の影響を分析することを基本としており、発生事象を地震や水害に限定しない考え方を取っています。

令和5年3月の改定では、テレワークの活用や情報セキュリティの強化に関する記述が加えられました。サイバー被害を受けた企業からの依頼では、情報システム部門の復旧計画と、全社の事業継続の計画をどう関係づけるかが論点になります。

BCP案件に必要な知識の範囲と学び方

BCP案件に必要な知識は、リスクの洗い出しと公的ガイドラインの理解が土台で、防災や情報セキュリティの専門家である必要はありません。

案件で求められるのは、各分野の技術的な詳細より、事業の優先順位を整理し、関係者の合意を取りながら計画に落とし込む力です。技術的な専門性が必要な部分は、依頼企業の情報システム部門や施設の担当者、必要に応じて専門業者に確認する前提で進めます。コンサルとして関わる範囲の線引きを、契約の段階で明確にしておくことが大切です。

リスクの洗い出し方

リスクの洗い出しは、事業影響度分析と並行して、自社が優先して備えるべき発生事象を絞り込む作業です。

ガイドラインでは、事業影響度分析は発生事象の種類によらず実施し、それと並行して、優先的に対応すべきリスクを分析・評価するとされています。実務では、地震、水害、感染症、設備の故障、サイバー攻撃、取引先の停止などを候補として挙げ、依頼企業の立地や事業内容に照らして発生の見込みと影響を整理します。

製造業であれば調達先の停止や設備の損傷、物流業であれば拠点やシステムの停止といったように、業種によって重点が変わります。依頼を受ける前に、自分の経験がどの業種のリスクに近いかを整理しておくと、面談で話を具体化できます。

関連ガイドラインの確認

関連ガイドラインの確認では、まず内閣府の事業継続ガイドライン(令和5年3月)を通読し、用語と手順の枠組みをそろえておくことが出発点です。

ガイドラインは、方針の策定、分析・検討、戦略・対策の決定、計画の策定、教育・訓練、見直し・改善という流れで構成されており、依頼企業との会話の共通言語になります。ガイドラインの記述の中では、国際規格のISO 22301にも触れられています。規格の認証取得を求める案件では、規格の要求事項の理解が別途必要になるため、依頼の範囲を最初に確認してください。

学び方としては、ガイドラインを読むだけでなく、自社や過去の勤務先を題材にして事業影響度分析の表を1枚作ってみる方法が現実的です。手を動かすと、聞くべき項目と、答えが出にくい項目が見えてきます。

中心に置くリスクの洗い出しとガイドライン理解、外側に置く情報システムや施設防災の専門知識を区別した図

BCP案件の探し方

BCP案件は、事業継続への要請が強い業種に絞って探し、エージェント経由と紹介を併用すると見つけやすくなります。

BCPだけを掲げた案件は多くないため、リスク管理、内部統制、DX、サプライチェーンの案件の中に、BCP策定が含まれる形で見つかることがあります。案件名ではなく、業務内容の記載まで読んで判断します。

製造・物流・医療などの事業継続重視の業種

事業継続への要請が強いのは、製造・物流・医療のように、供給や提供が止まると取引先や利用者への影響が大きい業種です。

これらの業種は、止まったときの影響が大きく、取引先や監督官庁からの確認も受けやすいため、BCP整備の動機が生まれやすいと考えられます。公共分野でも、自治体や関連団体が計画づくりを外部に支援してもらう場面があります。

月額単価の目安として、編集部の整理では、100%稼働換算で製造が140〜200万円、医療が130〜180万円、商社・流通・小売が120〜170万円、公共が90〜140万円のレンジです。ただし、これはコンサル案件全般の業種別の目安で、BCP策定支援に限った相場ではありません。BCP案件の単価は担当範囲や稼働率で大きく変わるため、個別の条件で確認してください。関連する案件の探し方は、製造業DXコンサルタントの案件獲得方法や医療系コンサルタントの案件獲得方法でも整理しています。

リスク管理系のエージェント枠

案件の探し方の基本は、エージェントを2〜3社登録し、リファラルを並行させ、直接取引は実績ができてから少数にとどめる順序です。

大手企業や上場企業、コンサルティングファームは、与信や購買規定、機密保持、請求処理の都合から、個人と直接契約しないケースが多くあります。そのため、エージェントという法人を挟む3者間の契約が基本になり、エージェント経由は非公開案件にアクセスする手段にもなります。BCPの案件を探すときも、リスク管理、内部統制、サプライチェーン、サイバーセキュリティといった領域に強いエージェントを、総合型と併用して登録しておくと、情報が入りやすくなります。登録後に案件を紹介されない場合は、エージェントに断られる・案件を紹介されない理由も参考になります。

BCP策定の成果物は計画書や分析表であるため、契約の形にも注意が必要です。コンサル案件の約7〜8割は準委任契約で、成果物の完成義務を負わず、月額と稼働率で報酬が決まる形が中心です。計画書の完成を求められる契約になっていないか、受け入れの条件が曖昧になっていないかを、契約前に確認してください。契約の個別判断は、弁護士など専門家への確認をおすすめします。

エージェント経由で案件を見るときに、編集部が確認したい項目を表にまとめます。

確認する判断軸

見るポイント

曖昧なまま受けた場合に起きやすいこと

目的

取引先への提出か、社内の備えか

求められる水準が合わず、手戻りが出る

対象範囲

全社か、特定の事業部か、特定の拠点か

ヒアリング先が増え、期間が延びる

成果物

分析表、計画書、訓練計画のどこまでか

作業量の見積もりがずれる

経営層の関与

目標復旧時間などを決める責任者がいるか

目標が決まらず、計画が止まる

稼働と期間

週あたりの稼働、全体の期間、訓練の支援を含むか

策定後の運用支援が想定外の追加作業になる

契約形態

準委任か請負か、受け入れ条件の有無

完成の責任をめぐる認識の違いが生じる

BCP案件を形だけの計画にしないために

BCPを形だけの計画にしないためには、訓練と見直しの仕組みを計画と同時に設計し、現場の負担を抑えて続けられる運用にすることが欠かせません。

計画書が完成した時点が、BCPの完成ではありません。ガイドラインは、点検や見直しを含む継続的な改善を含めて事業継続マネジメントと位置づけています。案件の価値は、納品後も計画が使える状態に保たれるかで決まります。

訓練と見直しサイクルの設計

訓練と見直しのサイクルは、机上の内容確認から始め、年に1回以上の点検と経営者による見直しを組み込んで設計します。

ガイドラインは、BCMの内容や実施状況を定期的(年1回以上)に点検し、経営者も年に1回以上の見直しを行う必要があるとしています。あわせて、事業や環境に大きな変化があったとき、BCPを発動した後にも見直しを行うべきだとしています。案件の提案では、年間のスケジュールに点検と訓練の時期を置き、誰が何を確認するかまで書いておくと、計画が放置されにくくなります。

現場の負担を抑えた運用

現場の負担を抑えた運用とは、完璧な計画を目指さず、できることから始めて、見直しのたびに少しずつ精度を上げていく進め方です。

ガイドラインは、初めから完璧なものを目指して着手に躊躇するのではなく、できることから取組を始め、継続的な改善で事業継続能力を高めるよう述べています。多額の費用をかけなくても一定の対応は可能であるとも示されています。現場の通常業務に追加の負担が大きいと、訓練が形骸化します。

具体的には、既存の会議の中に確認の時間を組み込む、連絡先や手順書は更新の担当者を決めて年に1回の見直しに限る、訓練は短時間の机上確認から始める、といった工夫が考えられます。依頼企業の規模や体制に合わせて、運用の重さを調整する提案ができると、納品後も使われる計画になります。システム面のリスクの見方は、システム開発のリスクと管理の進め方が参考になります。リスクマネジメント領域での独立を考えている場合は、リスクマネジメントコンサルタントとして独立する方法もあわせてご覧ください。

机上の内容確認、反復訓練、年1回の点検、経営者による見直しを循環させる訓練と見直しのサイクル図

出典・参考情報

  1. 内閣府(防災担当)「事業継続ガイドライン―あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応―」(令和5年3月)(2026-10-09参照)
  2. 内閣府「令和8年版 防災白書 第1部 第1章 第1節 1-9 事業継続体制の構築」(令和7年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査)(2026-10-09参照)

本記事のデータは2026年10月時点の情報に基づきます。契約・法令に関する個別の判断は、弁護士などの専門家にご確認ください。

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