リスクマネジメントコンサルタントがフリーランスで案件を獲得するには、エージェント経由を軸に複数ルートを組み合わせ、全社的リスク管理の枠組み構築やリスクマップ整備といった実務単位で実績を示すことが近道です。本記事では、案件が生まれる背景から獲得ルートの使い分け、商談で必ず問われる論点、継続受注につなげる動き方、案件が取れないときの見直しポイントまでを、コンサルタントの歩み編集部が整理します。
リスクマネジメントコンサルタントのフリーランス案件の獲得方法|ルート別の使い分けと商談の準備
リスクマネジメントコンサルタントのフリーランス案件はどんな企業から出るのか
リスクマネジメントコンサルタントのフリーランス案件は、事業会社の内部監査部門やグループガバナンス部門が抱える単発の体制整備・第三者評価ニーズから生まれることが多いです。
発注が生まれる典型的な状況
発注が生まれる典型的な状況は、全社的リスク管理の枠組み更新、内部監査で受けた指摘への体制強化対応、M&Aや新規事業に伴うリスクマップの再整備という3つの局面です。
常勤のリスク管理担当者だけでは手が回らない期間限定のプロジェクト(規程改定、リスクアセスメントの実施支援、第三者によるレビュー)で、外部の専門人材を起用する動きが広がっています。特に、内部監査部門やグループガバナンス部門が「社内だけでは客観性を担保しにくい」と判断した場面で、外部コンサルタントへの発注が生まれやすい傾向があります。
自然災害・供給網寸断・情報漏えいが相次ぎ、リスク管理体制の外部レビュー需要が高まっている
自然災害・サプライチェーン(供給網)の寸断・個人情報の漏えいといった事象が相次いで表面化しており、企業がリスク管理体制の外部レビューを求める動きが広がっています。
帝国データバンクが2025年5月19日〜31日に実施した調査では、事業継続計画(BCP)の策定率は全体で20.4%と、2016年の調査開始以来初めて2割を超えました。大企業では38.7%まで進んでいる一方、中小企業は17.1%にとどまっており、企業規模による差が広がっている状況です(帝国データバンク「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2025年)」、調査対象26,389社・有効回答10,645社)。
また、個人情報保護委員会が公表した令和6年度年次報告によると、法令上義務づけられている漏えい等事案の報告件数は19,056件と、前年度の12,120件から約57%増加しました。誤交付・誤送付といったヒューマンエラーに起因するものが多く含まれています(個人情報保護委員会「令和6年度個人情報保護委員会年次報告」)。こうした事象が積み重なる中で、社内のリスク管理体制を客観的に点検してほしいという発注が生まれやすくなっています。

リスクマネジメント案件を獲得する5つのルート
リスクマネジメント案件の獲得ルートは、エージェント経由・直請け・紹介・スポットマッチング・前職からの継続の5つに大別できます。それぞれ得意な案件の性質や成約までのスピードが異なるため、1つに絞らず組み合わせて動くことが実務的です。
エージェント経由・直請け・紹介・スポットマッチング・前職からの継続
5つのルートは、案件の母集団の広さと成約までのスピードという観点で使い分けます。
ルート | 特徴 | 向いている場面 |
|---|---|---|
エージェント経由 | 法人を挟む3者間契約が中心。非公開案件を含め母集団が最も広い | 独立初期の稼働の土台づくり |
直請け | クライアントと直接契約。単価を最大化しやすい | 実績と信用がすでにできている段階 |
紹介 | 前職・同業のコンサルタントからの紹介。実績を評価された状態から始まる | 成約までのスピードを重視する場合 |
スポットマッチング | 単発の相談・診断業務を扱うマッチングサービスを利用する | 短期のレビュー・診断業務 |
前職からの継続 | 独立直後から即座に稼働できる。競業避止・守秘義務の条項確認が前提 | 独立初月の収入確保 |
リスクマネジメント領域でどのルートが機能しやすいか
リスクマネジメント領域では、まずエージェント経由で稼働の土台をつくり、紹介や前職からの継続を並行して動かすのが基本ルートです。
大手企業・上場企業・コンサルティングファームは、与信(個人事業主の信用審査)や購買規定、機密保持の都合からフリーランス個人と直接契約しないケースが多く、法人であるエージェントを挟む3者間契約が実務上の基本になっています。これはリスクマネジメント領域に限った話ではなく、フリーランスコンサル市場全体に共通する前提です(ドメイン知識ベース「案件獲得の基本ルート」)。したがって案件獲得の順序は、(1)エージェント2〜3社に登録して稼働の土台をつくる、(2)前職・元同僚からのリファラルを並行する、(3)直請けは実績と信用ができた段階で少数、という進め方が現実的です。
独立初期は、案件数の多い総合型1〜2社と、自分の専門領域に強い特化型1社を組み合わせて2〜3社に登録するのが定石とされています(ドメイン知識ベース「最初に登録すべきエージェントの考え方」)。具体名を挙げる場合の例は次のとおりです。
エージェント | タイプ | 特徴 |
|---|---|---|
ProConnect | コンサル特化型 | 支払サイトが明確に示されている |
フリーコンサルタント.jp | 総合型 | 公開案件4,000件以上・登録者19,000名以上(2023年3月時点) |
ハイパフォコンサル | 総合型 | 公開案件8,085件・支払サイトは翌月15日払いで業界最速水準 |
リスクマネジメント特化のエージェントは現時点で確認できておらず、コンサル領域全般を扱う総合型・特化型を窓口にするのが実務的な選択肢です。エージェントを介す分、中間マージン(一般に20〜30%程度とされる、非公開のサービスが多い)が発生しますが、非公開案件を含む母集団の広さと引き換えと捉えるのが実務的な考え方です。

全社的リスク管理の枠組み構築とリスクマップ整備の実績を案件獲得につなげる方法
案件獲得では、担当した範囲・組織規模・成果を定量的に示せるかどうかが、書類選考・商談の通過率を左右します。
実績の書き方(担当範囲・規模・成果の示し方)
実績は、担当した業務範囲・対象組織の規模・成果物を分けて書くと、初対面の担当者にも伝わりやすくなります。
「全社的リスク管理の枠組み構築を支援した」だけでは経験の解像度が伝わりません。「グループ会社◯社を対象にしたリスクアセスメントの実施支援」「特定領域(サプライチェーン・情報セキュリティ等)に絞ったリスクマップの初版策定」のように、対象範囲(全社/特定事業部/グループ会社数)と成果物(規程・リスクマップ・報告書のいずれを納品したか)を分けて記載すると、担当者が案件との適合度を判断しやすくなります。職務経歴書・スキルシートの整理方法はポートフォリオ・経歴書の作り方でも解説していますので、あわせて参考にしてみてください。
守秘義務を守りながら実績を語る表現
企業名や案件名を伏せたうえで、担当したフェーズと成果を具体的に語ることで、守秘義務を守りながら実績の説得力を保てます。
リスクマネジメント案件は、対象企業の内部統制上の弱点やインシデントの詳細に触れる場面が多く、企業名や個別の事案を明示できないケースが一般的です。「上場企業(業種は伏せる)のグループガバナンス部門で、複数年にわたりリスクマップの改訂を主導」のように、業種・規模・関与期間を抽象化しつつ担当範囲を具体的に示す書き方が実務上有効とされています。開示できる範囲があいまいな場合は、前職の契約書にある守秘義務条項を確認したうえで表現を調整することをお勧めします。
リスクマネジメント案件の商談で必ず問われる論点
商談では、事業継続計画の策定範囲だけでなく、実効性の検証をどこまで担えるか、稼働条件や体制がどうすり合うかが必ず確認されます。
事業継続計画の策定と実効性の検証をどこまで担えるかの確認
商談では、事業継続計画(BCP)の「策定」だけでなく、訓練や見直しを通じた「実効性の検証」までを担えるかどうかが必ず確認されます。
内閣府が策定する事業継続ガイドライン(2023年3月改定)は、BCP整備を事業継続マネジメント(BCM)という平常時からの継続的な取り組みの一部と位置づけ、方針の策定から分析・戦略立案・文書化・教育訓練・見直しまでを一連のサイクルとして回すことを求めています。書類を作って終わりではなく、訓練を通じた実効性の検証や継続的な見直しまで対応できるかを、商談の初期段階で明確に伝えておくと、稼働範囲の認識ずれを防げます。
枠組みの設計自体については、ISO31000(JIS Q31000)というリスクマネジメントの国際規格が、原則・枠組み・プロセスという3層構造と、リスクの特定・分析・評価という一連のプロセスを示しており、リスクマップ整備の議論では共通言語として参照されることが多い規格です。この規格に沿った説明ができると、発注側の担当者との認識合わせがスムーズになりやすいといえます。

稼働条件・成果物・体制に関するすり合わせ
稼働日数・成果物の範囲・発注企業側の体制は、契約前にすり合わせておくべき論点です。
週何日の稼働を前提にするか、報告書やリスクマップといった成果物をどこまで納品するか、発注企業側の内部監査部門やリスク管理部門とどう役割分担するかは、案件ごとに幅があります。特に全社的リスク管理の枠組み構築は、対象組織の意思決定層を巻き込む必要があるため、経営層への報告機会が確保されているかどうかも商談時に確認しておくとよいでしょう。
リスクマネジメント案件を継続・リピートにつなげる動き方
契約期間中に次の課題を見つけて共有し、平時の費用対効果を経営層に伝わる形で言語化できるかどうかが、リピート受注の分かれ目になります。
契約期間中に次の課題を発見する動き
契約期間中に、当初のスコープ外にある次の課題を見つけて共有しておくことが、契約更新やリピート受注につながります。
リスクマップ整備の過程で、想定していなかったリスク領域(サプライチェーン上の取引先評価が未整備である、特定拠点の対応が手薄である等)が見つかることは珍しくありません。契約範囲外の課題であっても、担当者に早めに共有しておくと、次期の追加発注や契約延長の材料になります。
平時は成果が見えにくく、予算が削られやすいテーマなので費用対効果の説明が要るへの向き合い方
リスクマネジメントは、事故や不祥事が起きなければ成果が見えにくいテーマのため、平時には予算を削られやすいという構造的な弱さを抱えています。
コンサルタントの歩み編集部が、2026年8月時点でエージェント経由に確認できたリスクマネジメント領域の案件情報のうち、条件が明記されているものを横断的に確認したところ、発注企業がすでにサプライチェーン上の取引先リスク評価の枠組みを持っている場合は、リスクマップの更新や特定拠点の深掘り診断など範囲が明確な案件になりやすい一方、評価の枠組みが未整備の場合は、評価軸の設計から任される範囲の広い案件になりやすい傾向がうかがえました。少数の案件情報を確認した範囲の傾向であり統計的な代表性を持つ調査ではありませんが、発注企業側の体制の成熟度によって案件のスコープが変わりうる材料として紹介します。
費用対効果を説明する際は、「何も起きなかった」ことを成果として示すのではなく、リスク事象が顕在化した場合に想定される損失規模や対応コストと、体制整備にかかる費用を対比させて説明する方法が実務的とされています。平時にも継続支援が必要な理由を、経営層が判断しやすい形で言語化できるかどうかが、リピート受注の分かれ目になります。
案件が取れないときに見直すポイント
案件がなかなか取れないときは、専門領域の打ち出し方が広すぎないか、単価と稼働条件の設定が市場とずれていないかを見直してみるとよいでしょう。
提示している専門領域が広すぎないか
「リスクマネジメント全般に対応可能」という打ち出し方は、かえって発注企業に強みが伝わりにくくなることがあります。
全社的リスク管理の枠組み構築、事業継続計画の策定支援、サプライチェーンリスクの評価など、リスクマネジメントが扱う領域は幅広いため、経験のある領域を絞って打ち出す方が、担当者に強みが伝わりやすくなります。案件が取れない状況が続く場合は、スキルシートや職務経歴書の記載が総花的になっていないか、見直してみるとよいでしょう。
単価と稼働条件の設定が市場とずれていないか
提示単価が市場の相場とずれている場合、稼働条件の見直しが必要なサインになります。
市場より高すぎる単価提示は経験・実績に見合わないと判断されやすく、逆に低すぎる提示は経験不足を疑われることがあります。リスクマネジメント領域単体の単価統計は現時点で整備されていないため断定的な水準は示せませんが、登録しているエージェントの担当者に類似案件の相場感を確認しながら、稼働日数や単価の設定を調整することをお勧めします。
よくある質問
Q1. リスクマネジメントコンサルタントとしてフリーランス案件を獲得するには、何年くらいの実務経験が必要ですか。
A. 明確な年数の決まりがあるわけではありませんが、事業会社のリスク管理部門やコンサルティングファームで全社的リスク管理・危機管理を主体的に担当した経験が評価の材料になりやすいといえます。3〜10年ほどの実務経験を積んでから独立を検討する人が一定数いる、という程度の目安として捉えておくのが妥当です。
Q2. エージェントには何社くらい登録すればよいですか。
A. 案件数の多い総合型1〜2社と、専門領域に強い特化型1社を組み合わせ、2〜3社に登録するのが定石とされています。4社以上を並行すると管理の負荷が増えるため、まずは2〜3社から始めて様子を見ることをお勧めします。
Q3. 直請けだけで安定して案件を確保することはできますか。
A. 大手企業や上場企業、コンサルティングファームは与信・購買規定・機密保持の都合からフリーランス個人と直接契約しないケースが多く、直請けだけに頼るのは難しい場合があります。まずはエージェント経由で稼働の土台をつくり、実績と信用ができた段階で直請けを少しずつ増やしていく進め方が現実的です。
Q4. 案件で扱った内容を、守秘義務を守りながら実績として語るにはどうすればよいですか。
A. 企業名や個別の事案を明示せず、業種・規模・関与期間を抽象化したうえで、担当した範囲や成果を具体的に示す書き方が実務上有効とされています。開示できる範囲に不安がある場合は、前職の契約書にある守秘義務条項を確認してから表現を調整することをお勧めします。
出典・参考情報
- 帝国データバンク「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2025年)」(2025年5月19日〜31日実施、2026年9月確認):BCP策定率の根拠
- 個人情報保護委員会「令和6年度個人情報保護委員会年次報告」(2026年9月確認):漏えい等報告件数の根拠
- ニュートンコンサルティング「事業継続ガイドライン(内閣府)」解説ページ(2026年9月確認):内閣府「事業継続ガイドライン」(2023年3月改定)のBCP/BCMの位置づけに関する根拠
- 以学(Kogures)「ISO31000(JIS Q31000)リスクマネジメント−原則及び指針」(2026年9月確認):ISO31000の3層構造に関する根拠
- コエテコキャリア「フリーコンサルにおすすめのエージェント10選【2026最新】」:案件獲得ルート・エージェント登録社数に関する参考データ
- Pro-D-Use「フリーコンサル向けマッチングサービス厳選15社」:各エージェントの公開案件数・支払サイトに関する参考データ
- コンサルフリーマガジン「フリーランスエージェントのマージン」:エージェントの中間マージン相場に関する参考データ
- コンサルタントの歩み編集部独自調査(2026年8月時点):サプライチェーン上の取引先リスク評価の枠組みの有無と案件条件の関係に関する参考情報
本記事の内容は2026年9月3日時点の情報に基づきます。制度や市場の状況は変動するため、最新の内容は各公的機関の公式サイト等でご確認ください。個別の契約・体制に関する判断が必要な場合は、専門家やエージェント担当者に相談したうえで進めてください。
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