複業とは何かを整理せずに始めると、就業規則との齟齬や本業への支障につながりかねません。本記事では、コンサルタントとして働く会社員が複業を始める前に確認すべきこと、案件の探し方、契約と確定申告の基礎、そして独立を見据えたキャリア設計までを、コンサルタントの歩み編集部が把握している複業コンサルタントの傾向も交えながら解説します。
コンサルタントの複業の始め方
コンサルタントが複業を始める前に知っておくべきこと
複業を始める前に押さえておきたいのは、複業と副業という言葉の違い、そして会社員コンサルタントが複業を選ぶ理由という2つの基本です。
複業と副業の違い
複業とは、複数の仕事のすべてを本業として位置づける働き方を指し、収入の補填を主目的とする副業とは前提が異なります。
一般的な整理では、副業は「文字が表すとおり『サブ』的な位置付けの仕事」であり、本業を主としながら収入を補う目的で時間を切り売りする感覚に近いとされます。一方の複業は、本業・副業という序列を設けず、複数の仕事それぞれに一定の時間を割り当てる働き方として区別されます(出典:リクナビNEXTジャーナル)。
コンサルタントの場合、この違いは働き方の姿勢に直結します。「空いた時間でこなす仕事」として捉えるのか、将来の独立も視野に入れた「もう一つの専門実践の場」として捉えるのかで、案件の選び方や向き合い方が変わってきます。本記事では後者の姿勢を前提に解説します。
会社員コンサルタントが複業を検討する背景
会社員コンサルタントが複業を検討する背景には、副業を容認する企業の増加と、収入目的からキャリア形成目的へと複業の位置づけが変化してきたことがあります。
パーソル総合研究所が2025年8月に実施した調査によると、正社員の副業実施率は前回調査から4.0ポイント上昇し、2018年の調査開始以来最高の11.0%に達しました。あわせて、企業が社員の副業を認める「副業容認率」も64.3%(2023年調査比+3.4ポイント)まで上昇しており、複業を前提とした働き方が徐々に社会に定着しつつある段階といえます(出典:パーソル総合研究所「第四回 副業の実態・意識に関する定量調査」2025年10月28日発表)。
コンサルタントの業務はプロジェクト単位・成果物単位で稼働範囲が区切られる準委任契約が中心であるため、他の職種と比べて週数時間から数日といった低稼働の案件を組み立てやすいという特性もあります。会社員として本業を続けながら、こうした低稼働案件を通じて自分の専門性が社外でどこまで通用するかを確かめたいという動機が、複業検討の背景として増えていると考えられます。
複業を始めるための準備ステップ
複業を始めるにあたっては、社内ルールの確認・時間の確保・提供できる専門性の整理という3つの準備を、案件を探す前に済ませておくことが実務上の順序になります。
就業規則・競業避止義務の確認
複業を始める最初のステップは、勤務先の就業規則で兼業・副業に関する規定と、競業避止義務の範囲を確認することです。
厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(平成30年1月策定、令和4年7月改定)に沿って改定されたモデル就業規則では、「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。」とされ、副業・兼業は原則として認める方向に整理されています。ただし同ガイドラインは、企業が例外的に副業・兼業を制限できる場合として、①労務提供上の支障がある場合、②業務上の秘密が漏洩する場合、③競業により自社の利益が害される場合、④自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合、の4つを挙げています(出典:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」)。
コンサルタントの場合、担当してきたクライアントの業界・案件情報を複業先に持ち込むと②や③に触れる可能性があるため、自社の就業規則に加えて、担当クライアントとの契約書にある秘密保持条項もあわせて確認しておく必要があります。就業規則の具体的な解釈や自社での複業の可否については、勤務先の人事・法務部門に個別に確認することをおすすめします。
稼働時間の確保と本業との切り分け
複業の稼働時間は、平日夜間や週末などあらかじめ確保できる枠を先に決めておき、本業の勤務時間・情報と明確に切り分けることが実務上のポイントです。
たとえば、平日は21時以降の2時間、土曜は午前3時間というように、稼働可能な時間帯を先に固定してから案件の稼働条件と照らし合わせる進め方であれば、本業への支障を避けやすくなります。
曜日・時間帯 | 充当する業務の例 |
|---|---|
平日 21:00〜23:00 | ミーティング参加、資料レビュー |
土曜 9:00〜12:00 | 資料作成、分析作業 |
日曜 午後 | 翌週の準備、振り返り |
本業の就業時間中に複業関連の連絡や作業を行わないこと、本業の社内システム・端末・資料を複業案件に利用しないことも、切り分けの基本です。あわせて、複業先の案件担当者にも自分が対応できる曜日・時間帯をあらかじめ伝えておくと、稼働条件のミスマッチを防げます。
スキル・経験の棚卸し
複業で提供できる専門性を言語化するには、これまで担当してきたプロジェクトの役割・成果物・使用したフレームワークを棚卸しすることが有効です。
棚卸しの軸としては、担当した業界・担当したプロジェクトの工程(構想・要件定義・実行支援など)・果たした役割の階層・作成した成果物の種類・使用してきた分析フレームワークやツールが挙げられます。これらを箇条書きで一覧化しておくと、案件応募時のプロフィール作成やエージェントとの面談でそのまま活用でき、自分の専門性がどの案件にフィットするかを判断しやすくなります。

複業案件の探し方
複業コンサルタントが案件を探す方法は、エージェント・マッチングサービスの活用と、知人紹介やSNS発信からの獲得という大きく2通りに整理できます。
エージェント・マッチングサービスの活用
複業案件を探す際も、大手企業の案件はエージェント経由でのマッチングが基本ルートになります。
大手企業や上場企業は、与信(個人事業主の信用審査)・購買規定・機密保持・請求処理の都合から個人と直接契約しないケースが多く、法人であるエージェントを挟む3者間契約が実務上の基本になっています。案件獲得の順序としては、エージェント2〜3社に登録して稼働の土台をつくり、前職・元同僚からのリファラルを並行して進め、直取引は実績と信用ができた段階で少数手がける、という進め方が現実的とされています(出典:ドメイン知識ベース「案件獲得の基本ルート」)。
登録するエージェントの社数は、案件数の多い総合型を1〜2社と、自分の専門領域に強い特化型を1社組み合わせ、まず2〜3社にとどめるのが定石とされています。複数登録することで案件の選択肢を広げて相場感をつかめるほか、非公開案件への露出も増やせます(出典:ドメイン知識ベース「最初に登録すべきエージェントの考え方」)。
エージェント | タイプ | 特徴 |
|---|---|---|
ProConnect | コンサル特化型 | 戦略・IT/DX・PMOなどコンサル領域全般を扱い、専任担当によるマッチングを行う |
フリーコンサルタント.jp | 総合型 | 公開案件数が国内最大級とされる総合型サービス |
ハイパフォコンサル | 総合型 | 公開案件数が多く、支払サイトが業界最速水準とされる |
Strategy Consultant Bank | 特化型 | 戦略領域・低稼働案件に強い特化型サービス |
コンサルGO | 特化型 | DX/AI領域に強い特化型サービス |
複業として案件を探す場合は、登録時に週の稼働可能時間・対応できる時間帯を明確に伝え、フルタイム前提の案件と混同されないようにすることが実務上のコツです。
知人紹介・SNS発信からの案件獲得
エージェント経由の登録と並行して、前職・元同僚からのリファラルや、SNSでの実績発信も有効な案件獲得チャネルになります。
特に複業段階では、これまで一緒に働いた同僚や上司からの紹介が、実績や信頼関係をすでに共有している分、条件面での調整がしやすい傾向があります。SNSでの発信は、専門領域に関する知見や実務での気づきを発信することで案件相談につながるケースがある一方、担当クライアントの固有情報や守秘義務に触れる内容を発信しないよう注意が必要です。案件の獲得チャネルはエージェント経由を基本としつつ、リファラルとSNS発信は補完的な手段として組み合わせるのが実務的な考え方です。
複業コンサルタントの契約・確定申告の基礎
複業コンサルタントが押さえておくべき実務知識として、契約形態の基本と、確定申告が必要になる条件の2点を整理します。
契約形態(業務委託が中心)
複業コンサルタントの契約は業務委託契約が中心で、その中でも成果物の完成義務を負わない準委任契約が主流です。
フリーランス・複業のコンサル案件の約70〜80%は準委任契約とされ、報酬は「月額◯◯万円×稼働率」の形で算出されるのが一般的です。これに対し、成果物の完成・納品そのものが報酬の対象になる請負契約や、稼働時間を精算するSES契約という形態もありますが、複業コンサルの案件では準委任が中心になります(出典:ドメイン知識ベース「業務委託契約の形態」)。
契約形態 | 報酬の考え方 | 完成義務 |
|---|---|---|
準委任契約 | 月額単価×稼働率 | 負わない(業務遂行そのものが対象) |
請負契約 | 成果物単位 | 負う(納品・完成が対象) |
SES契約 | 時間精算(月140〜180時間等) | 負わない |
契約書を交わす段階では、稼働時間の目安・報酬の確定方法・秘密保持の範囲・契約期間(3〜6カ月が一般的とされる)を確認しておくと、本業との両立を前提とした条件のすり合わせがしやすくなります。契約内容の法的な解釈に迷う場合は、弁護士など専門家に確認することをおすすめします。
確定申告が必要になるケース
会社員が複業で得た所得は、給与以外の各種所得金額の合計が年間20万円を超えると、原則として所得税の確定申告が必要になります。
国税庁は、給与を1か所から受けていて給与の全部が源泉徴収の対象となる人について、「各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円を超える人」を確定申告が必要な人の一つとして挙げています(出典:国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」)。複業コンサルタントの報酬は業務委託契約に基づく事業所得または雑所得にあたることが一般的で、必要経費を差し引いた所得ベースで20万円を超えるかどうかを判断します。
なお、所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告は別途必要になるケースがある点には注意が必要です。医療費控除やふるさと納税などで確定申告を行う場合は、複業所得が20万円以下でもあわせて申告する必要があります。自分のケースで確定申告が必要かどうかの最終的な判断は、税理士や税務署への確認を通じて行うことをおすすめします。

複業から独立への移行を見据えたキャリア設計
複業を、いずれ独立するかどうかを判断するための検証期間として位置づけると、その後のキャリア設計がしやすくなります。
複業期間に検証すべきこと
複業期間には、案件の単価感・獲得チャネルの再現性・本業と両立できる収入の安定度という3点を検証しておくと、独立判断の材料になります。
複業で受けた案件の単価が、自分の経験・役割に対して市場でどの水準にあるのかを把握しておくと、独立後の単価設定の目安になります。また、1つのエージェントや1件の紹介だけに頼らず、複数チャネルから案件を再現的に獲得できているかどうかも、独立後に案件が途切れないかを見極める材料になります。稼働できる時間が限られる複業の段階でこそ、無理のない範囲でこれらを検証しておくことが、独立後のリスクを下げることにつながります。
独立タイミングの見極め方
独立のタイミングは年齢だけで決まるものではなく、案件単価の安定度や生活防衛資金の有無など複数の要素をあわせて判断するのが実務的です。
フリーランスコンサルタントとして独立する人は20代後半〜30代前半が主流とされ、大手ファームや事業会社を2〜3社経験してから独立するパターンが多いとされています(出典:ドメイン知識ベース「独立時の年齢層とキャリアパス」)。ただし年齢にかかわらず、複業期間で検証した単価感・案件獲得の再現性に加え、当面の生活費をまかなえる資金や家族の状況を踏まえて総合的に判断することが独立時期の見極めとして現実的です。独立後の事業形態(個人事業主か法人か)の判断軸はコンサルタントの法人化 vs 個人事業主で解説しているので、あわせて参考にしてください。最終的な独立判断は、税理士やキャリアの専門家への相談も選択肢になります。
コンサルタントの歩み編集部が調査した複業の実態
コンサルタントの歩み編集部では、複業コンサルタントの働き方について独自に情報収集を行っており、その傾向を紹介します。
複業コンサルタントの週稼働時間の傾向
複業コンサルタントの週稼働時間は、平日夜と週末を合わせて10〜20時間程度に収まるケースが多い傾向にあるとみられます。
コンサル案件ではフルリモートや週2〜3日出社のハイブリッド案件が増えており、特にM&A関連など稼働率20〜50%の低稼働案件では複業や複数案件の同時進行がしやすいとされています。年収を試算する際も、年間で1〜2カ月程度のアベイラブル(案件と案件の間の空白期間)を織り込み、稼働率にして83%前後を前提に置くのが実務上一般的とされ、複業の場合はこのアベイラブル部分に稼働時間を充てる働き方も見られます(出典:ドメイン知識ベース「稼働形態と複業・アベイラブルの実態」)。コンサルタントの歩み編集部が把握している範囲でも、複業コンサルタントの多くは週1〜2日、あるいは平日夜と土曜半日程度の稼働に収める形で案件を組み立てている傾向がうかがえます。

複業を始めて良かった点・苦労した点
複業コンサルタントからは、案件の選択肢が広がった点を良かった点として、本業との時間確保を苦労した点として挙げる声が多い傾向にあります。
良かった点としては「自分の専門性が社外でどこまで通用するか把握できた」「独立するかどうかの判断材料が得られた」といった声が多く聞かれます。一方で苦労した点としては、「本業の繁忙期と複業案件の納期が重なったときの調整が難しい」「平日夜の稼働が続くと体調管理が難しくなる」といった声が挙げられており、稼働時間の確保と体調管理の両立が課題になりやすいとみられます。個人差がある点にはご留意ください。
まとめ
コンサルタントが複業を始める際は、次の5点を順番に確認しておくと実務上の失敗を避けやすくなります。
- 複業と副業の違いを理解し、本業と対等な仕事として複業に向き合う姿勢を持つこと
- 就業規則・競業避止義務を確認し、必要に応じて人事・法務部門に相談すること
- 稼働時間をあらかじめ確保し、本業の情報・時間と明確に切り分けること
- エージェント経由を基本に、リファラルやSNS発信も組み合わせて案件を探すこと
- 契約形態と確定申告の要否を理解し、迷う場合は専門家に確認すること
複業は、いきなり独立するのではなく、案件の単価感や獲得チャネルの再現性を低リスクで検証できる期間でもあります。本業を続けながら複業で得た経験を、その後の独立を検討する材料として役立てていくことが、無理のないキャリア設計につながります。
出典・参考情報
- パーソル総合研究所「第四回 副業の実態・意識に関する定量調査」(2026年9月参照):正社員の副業実施率・企業の副業容認率の根拠
- 厚生労働省「副業・兼業と労働条件」(副業・兼業の促進に関するガイドライン解説)(2026年9月参照):モデル就業規則・副業制限事由の根拠
- 国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」(2026年9月参照):20万円ルールの根拠
- リクナビNEXTジャーナル「パラレルキャリアとは?副業との違い、メリット・デメリット、実践例を紹介」(2026年9月参照):複業と副業の定義整理の参考情報
本記事の情報は2026年9月時点のものです。就業規則・契約・税務の取り扱いは個人の状況や勤務先によって異なるため、実際の判断にあたっては勤務先の人事・法務部門や税理士など専門家にご確認ください。
スキルシートを登録するだけ。専任エージェントが最適な案件を無料でご提案します。
無料でコンサルタント案件を探す